「一条の若姐、宜しければ注がさせて頂けませんか。」


「あ、すみません…。」



わたしのお父さんくらいのおじさんが、わたしに対してオレンジジュースでお酌してくれるなんて。
藤雅曰く、傘下の組だから組長とはいえ本家筋の人間に対しては年齢なんて関係ないらしい。


そうは言われても、場馴れしてる藤雅と違ってさっきから申し訳なさでいっぱい。
お腹もオレンジジュースでいっぱいになりそう。



「まだ学生とお聞きしましたが、若とはどこでお知り合いになられたのですか?」


「えっと、公園で…。」


「そうでございましたか。
これぞ運命というやつ、でございましょうか。」


「あ、あはは…。」


「一条の若姐、私のも是非…。」


「高田、それは俺が貰う。」


「若。ありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。」



わたしの隣で、注がれるお酒を飲み続けている藤雅は顔色ひとつ変わらない。
わたしの分だって飲んでくれてるし、大丈夫なのか心配になっちゃう。


それに…さっきの藤雅が殴ってた人たちの姿も見当たらない。
こんなに人がいるんだから、紛れてる可能性もあるけれど…。