「芽来ちゃん…。」


「だから、大丈夫なんです。
ごめんなさい、上手く言えないや…。
えっと、だから…藤雅のことが怖いとかそういうのは、無いんです。
ただ、びっくりしちゃって…あの雰囲気に…。」


「…ふふ、そうねえ。
色んな組の人達がくるから、いつもの一条とは雰囲気も変わるしピリつくものね。」



不安そうな顔をしていた千歳さんだけど。
やっと、笑ってくれた。

お母さんとして、藤雅の事を心配していたから。
大丈夫ですよって。
ちゃんと伝えられて良かった。



「でも…息子を庇うわけじゃないけど、あれは流石に酷いと思うわ。
芽来ちゃんのこと、あんな風に言うなんて。
いくら綺麗だからって言っていいことと悪いことがあるわよ。」


「え、あの…なんて言ってたんですか…?
わたし、正直緊張しててお話あんまり聞いていなくて…。」



わたしがそう言うと千歳さんは、知らなくていいって笑っていたけど。
わたしがあまりにもしつこく聞くものだから、噛み砕いて教えてくれた。

話を聞きながら、それは怒るだろうなって。
ぼんやりと考える。



「でも良かったわ。」


「なにがです…?」


「芽来ちゃんが、藤雅のマイナスなところを見ても一緒に居てくれて。
…ありがとう。母親として、嬉しいわ。」


「…こちらこそです。
わたしのダメなところとか見せても、藤雅は受け入れてくれて…。」


「女の子は、少しくらい弱いところがある方が可愛いもの。
それが芽来ちゃんなら尚更。」



ねえ〜って、千歳さんはわたしに同意を求めるように微笑んでから立ち上がると。
そろそろ終わる頃よ、と襖を開けた。


丁度、足音が聞こえてきて顔を上げれば。
藤仁さんと藤雅が歩いてきた。