「巡?どうしたの?」


「あ、この人が…。」



調整が終わったようで、ソーイングセットを片手に戻ってきた瑛。
不思議そうに、わたしと女の子を見てる。


女の子の方から、事情を話すと。
瑛は嬉しそうに、わたしの手を取った。



「巡ならきっとできるよ!
私のモデルの子も、半年前に芸能科に転入した子だったし!
…いつもの、堂々とした巡なら出来るよ。」



瑛はこっそり…わたしにしか聞こえないような声で言った。


そんな風に、言ってもらえたら。
引き受けるしかないじゃない。
歌わなくても、舞台の上では芽来じゃなくて巡になれるはず。



「良いですよ。」


「ありがとうございます…!
軽く合わさせてください!
えと、お名前は…。」


「…巡です。」


「巡さん!
こちらにお願いします!」


「分かりました。…ちょっと待っててね。」



瑛に告げてから、女の子に案内されるがまま奥の方へ入っていく。


調整の為に着付けをしてくれて、沈黙で居るのも気まずいし色々と話をすると。
名前も教えてくれたし、将来の話なども沢山聞かせてくれた。