「大学は考えていないの?」


「考えていないです。
無駄に4年も通ってなにが残るのかわたしには分からないし、手に職つけるために資格が欲しいので。」


「堅実なのね、彩瀬さんは。
先生もいくつか、合いそうな学校探してみるわ。」


「ありがとうございます。」


「ねえ、一つ聞いてもいいかな?」


「なんですか?」



いやだなあ、なんか。
あんまり良いことじゃない気がする。


そういう時の勘ってなぜかあたってしまうもので。
先生の口から出たのは、柑奈のことだった。



「彩瀬さんから、軽く言ってもらえないかな?
クラスに何人か、嫌な思いをしてる子たちがいるみたいなの。」


「分かりました。
柑奈も悪気はないと思うので、それとなく伝えておきますね。
…それじゃあ、わたしは帰りますね。」



さようなら、先生。
先生の顔も見ずにそう言うと、わたしは音楽室を出た。


本当、頼りにならない先生。
柑奈に直接注意できないから、わたしを通したのが見え透いてて嫌になる。
これだから、とろい人って嫌い。