ライブ終了後。
メンバーと別れて、わたしは帰路についた。
鼻歌交じりにいつもの公園を横切って、ベンチに座ろうとしたら。



「……あれ?」



今日は猫じゃない、先客がいる。
なんとなく、うっすらと黒い影が見えた。


やだ、こんな時間に人がいるなんて。
人が居ないところがお気に入りだったのに。
どうしようかな、ベンチに座らないで今日は真っ直ぐ帰ろうかな。



そう思いつつも、公園に足を踏み入れた。
なんとなくベンチの前を横切って先客の顔でも見てやろうと。



「…!」



思わず、ハッとした。

あまりにも綺麗な顔の人が目を瞑っていたから。


月明かりに照らされた横顔。それに引けをとらない白さで艶のある肌。
さらさらの黒髪は風に靡くと、そのままこの暗闇の中に解けていくような感じがして。
閉ざされた切れ長の瞳から見える長い睫毛。まるで彫刻か何かの芸術品だ。