今日、実家でどんな話をしてきたのかな。
きっと、藤雅なら聞いたら答えてくれると思う。
だけど、わたしは聞けなかった。
こんな風に弱った藤雅に聞くのが申し訳なかった気持ちと、聞くのが怖かった気持ちと半々。


クーラーの効いた寝室を出て、ベランダに向かう。
熱帯夜と連日言われるだけのことはある、むわっと蒸し暑い空気が広がった。
深夜だというのに、まだまだ暑いなんて。



「海…行ってみようかな。」



いつまでも藤雅の実家を避けるわけにはいかない。
今後のことを考えるなら尚更。
藤雅の仕事柄、実家とは切っても切れない縁だろうから。


でもなあ。
ちょっと怖いなあ…。
どんな風に藤雅のご両親を思われているかも分からないし…。



「ーー芽来?」



「藤雅…?
ごめんね、起きちゃった?」



汗ばんできたし。
そろそろ戻ろうかと思っていたら。
カタン…と音がして、藤雅が不安そうな顔をして、立っていた。


グイっとわたしの腕を掴んで、部屋へ連れ戻すと。
そのままわたしを抱きしめてきた。



「不安だった?ごめんね。」


「目が覚めたら、お前がいなくて不安になった。」


「そうだよね、ごめん。
戻ろうか、今何時かなあ。」



藤雅の頭を撫でてから、今度はわたしが藤雅の腕を掴んで。
一緒に寝室へ向かった。