「…っ。」



悔しくて、自分が不甲斐なくて。
唇を無意識のうちに噛み締めていた。


わたしがもう暴れて降りようとしないと分かったはずなのに。
藤雅は、わたしを抱きしめて離さなかった。



「芽来ちゃん。」


「…なに。」


「あんなところで何してたの?」


「…ご飯食べてたの、メンバーと。
これからの打ち合わせも兼ねて。
帰り際だったけど、なにか話したそうにしてたから聞こうとしたらこうなった。」



どう考えても八つ当たりだけど。
十葵にもぶっきらぼうに返事をした。


ムカつくから、もう1回睨んでやろうかと思って顔を上げたら。



「…!」



気づいちゃった。
わたしを抱きしめる藤雅の目から、涙が零れて手が震えてるのを。


わたしの頬に、藤雅の涙が降ってくる。
声も出さずにただ、涙を流している。
こんな風に弱った藤雅を見るのは、あの離れた時以来だ。



「…藤雅、ごめん。
不安にさせちゃったね。」


「……。」


「藤雅のことも大事だけど、柊のことも大事なんだ。
同じくらいなんて言わないよ、だけど…柊も大事な友達なの。」


「……知ってる。」


「ごめんね。」



だから、もう泣かないで。
そう思いを込めて頭を撫でてみるけど、藤雅は離れようとしない。
むしろ、腕の力が強くなって少し痛い。