「…行くぞ。」


「わ、ちょっと!
ごめん、柊また連絡する。
ほんとにごめん、何か話したいことあったんだよね!」



藤雅に無理やり車に押し込められながら。
わたしはなんとか柊に伝えたくて、声を張り上げる。


車に乗れば、運転席には蒼樹さん。
助手席には十葵がいて、ため息をついていた。
だけど、今はそんなことどうでもいい。



「何してんのよ!
勝手なことしないで!」


「何怒ってんだ。」


「怒るに決まってるでしょ!?
柊、なにか話したそうにしてたのに!
聞きそびれたじゃない!」



キッと藤雅を睨みつける。
声を荒らげるわたしと正反対に、冷静な声で話してくるのが余計に腹立つ。


今だけは、嫌いだ。許せない。
わたしの大事な友達なのに。
柊は、何かわたしに言いたいことがあったんだと思う。
わたしに聞いてもらいたい何かが。



「そんなにあいつが大事か。」


「当たり前でしょ!
わたしの友達なんだよ!?
どう見たって何か悩んでた顔してたんだよ!
もう降ろして!」


「おい、危ないだろ!」


「離してよ!触んないで!」



車から降りようとするわたし。
それなのに、藤雅が離してくれない。


今戻れば、柊の話を聞いてあげられるのに。
いつも、あんまり自分のことを話してくれない柊が…話そうとしてくれてたのに。