「……助けて、誰か…。」



必死に暗闇を藻掻くわたし。
後ろから、ひとつの手がわたしに向かって伸びてきている。


誰か、誰か、誰か。
助けて、助けて!


怖いよ、なんでこんな事するの!
わたしが何をしたっていうの!
どうしてこんなことばかりするの!

いつもいつも、わたしにばっかり。
酷いことをするんだ。


走るのに疲れたわたしは。
もう諦めたようで、走るのをやめた。


逃げるのも疲れた。
もう…こんな事ばっかり繰り返すのは嫌だ。
今よりも小さいわたしは、ぽろぽろと涙を落とし続けていた。



ーー…「芽来。」



聞き慣れた声で、ハッと顔を上げる。


わたしの目の前で微笑むその人は、眩しくてよく見えないけれど。
でもどこか、懐かしい気持ちがした。