俺は真結さんの病室の前で立ち止まった。先週見舞いに行ってから、叶汰からも真結さんからも連絡が来ることはなかったが、もしまた体調が悪化していたら……。直面し得る現実への恐怖で俺の心はいっぱいだった。見舞いに来た以上もう病室に入るしかないのに、どうしよう、どうしようなんて病室の前を右往左往していると、突然ドアががらっと開いて、車椅子に乗った真結さんが出てきた。
「こ、こんにちは」
「あ、陽介さん! 丁度いいところに。今から中庭に行くところだったんです。一緒に行きませんか?」
信じがたいことだが、彼女は1週間で心を持ち直していた。
「病室から出て平気なんですか?」
「冬は外に出ても汗かかないので、よく中庭に行くんです」
真結さんは慣れない手つきで必死に車椅子を進めた。
「車椅子押しましょうか?」
彼女は目を輝かせた。
「ありがとうございます!! 車椅子って意外と重くて、もう腕パンパンなんですよ〜」
彼女は元気に笑っていた。その笑顔は病気が悪化する前と変わらなかった。