叶汰の真っ直ぐな目は俺の心に刺さった。だけど、今ここで目を背けてしまったら、きっと俺は一生後悔するだろう。俺は叶汰の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「俺、死ぬまで真結さんの彼氏でいるって約束したから。逃げたりなんてしねぇーよ」
叶汰はふっと笑った。
「お前の馬鹿みたいに真面目な性格は、昔っから変わってないみたいだな」
「それに…最初は偽りの彼氏だったけど、今の俺の気持ちは偽りなんかじゃないから」 
「おいおいお前、いつからそんなにキザになったんだよ」 
叶汰は俺の肩に腕を回した。
「別にかっこつけてねーよ」
「かっこつけてんだろ。『俺の気持ちは偽りなんかじゃないから』なーんて言っちゃってさー」
「もういじるなって」
俺は叶汰の手をがしっと掴んだ。俺らは久々に取っ組み合いをした。昔はよくこうして笑いながら遊んだものだ。
「やべ、真結が起きちゃう」
「だな、じゃあ俺もう帰るわ」
「じゃあな」
俺は忍び足で病室を出た。

家に帰ってスマホを開くと、叶汰から1件のメールが届いていた。

『症状が悪化したことで、体にどんな影響が出るか、一応お前に伝えておく。真結は今まで少しずつ塩の栄養分を点滴で摂取していたが、その点適量がついに1日に必要な量を下回ってしまった。だから、強い疲労感が出たり、体が思うように動かせなくなったりするかもしれない』

これからもう彼女の笑顔が見られることはなくなるのかもしれない。もう彼女の死はすぐ近くまで来ているのかもしれない。だけど、一番苦しいのは彼女だから。俺がちゃんと支えるんだ。