10月に入り、流石に夏から秋へと移り変わってきた頃、俺の腕にまとわりついた大きな固定器具が外れた。小さな板を包帯でぐるぐる巻きにしただけの俺の腕に、涼しげな秋風が当たり気持ちが良い。俺の足取りも自然と軽くなって、いつもより軽やかなステップで彼女の病室に行った。

しかし、俺の目の前には苦しむ彼女と、数人の医師や看護師がいた。彼女の病室には珍しく緊迫した空気が立ち込めていた。呼吸が浅く、酸素マスクを付けた彼女は、唇までもが青紫色になっていた。医者たちの言う難しい言葉が俺の頭を痛くする。
呆然と立ち尽くしていると、薬を取りに行こうとした看護師とぶつかった。
「はっ！　すいません！　怪我はないですか？」
「あ…大丈夫です」
「ならよかった…失礼しました」
その看護師は胸を撫で下ろすと、また走って薬を取りに行ってしまった。俺はここに立っているのが辛くなって、彼女を背に家に帰ってしまった。

家に帰ってから、俺はいつも気にしないスマホをずっと手にしていた。彼女からメールが来ないかずっと気にしていたのである。あんな苦しそうだったけど、「すいませーん！　体調崩してましたー！」なんて明るいメールが届いてほしい。そんな思いでスマホを見ていた。

だけど、いつまで経っても彼女から連絡は来なかった。