「まぁ、夢語りはここら辺にしてそろそろ帰るか。」
麦茶を飲み終えた鮫島が紙コップを捨てていた。
「そうだな。」
俺は勢いよくリュックを背負った。その時右手首が痛んだ。
「おいおい、陽介は手首脆いんだから。気をつけろよ?」
脆いっていうのは、骨が弱いわけではなく、幼い頃の大怪我が原因。
野球を見に行って、何を思ったのかファウルボールに体当たりしたらしい。
「そうだな。怪我したら甲子園行くどころの騒ぎじゃないからな。」
俺と鮫島は誰もいない真っ暗な校門を出た。
「じゃあな。」
鮫島は寮に住んでいて、帰り道は俺と真逆。だから校門ですっかり別れてしまう。
「また明日。」
俺は、自転車に跨る鮫島を背に帰路に立った。