今日は野球の試合中継がない日だから、彼女の見舞いは昼前に行った。彼女の病室に近付くと、野球の試合があるはずもないのに、病室の中が騒がしいことに気付いた。また胸騒ぎがして、病室のドアをガラッと開けたと同時に、盛大なクラッカーの音が鳴って俺は肩をすくめた。
「お誕生日おめでと〜!!」
彼女の病室には小さな子どもたちからよく見るおばちゃん看護師まで、沢山の人が集っていた。その中心には、ケーキ模様のハットに、『HAPPYBIRTHDAY』と書かれたサングラスをかけた、いかにもパーリーピーポーな感じの彼女の姿があった。
俺はひっそりと様子を伺うつもりだったのに、見慣れない彼女の姿に思わず笑ってしまった。
「あっ! 陽介さん! 来るんじゃないかって思ってましたよ〜!」
普段から明るい彼女が、見た目までパーリーピーポーになってしまったら、もう否定しようがない『パーリーピーポー』だ。 
「あ、えっと、どうも」
俺は導かれるように中心の輪に招かれた。
「まゆーおねーちゃん! おたんじょーびおめでとう!」
小さな子供たちが大きな彼女の似顔絵を渡した。
「みんなでがんばってかいたんだよ!」
小さな女の子が目を輝かせてそう言った。
「うわー! 上手! ひなたちゃんもえいたくんもときちゃんも、みんなありがとう!」
小児科患者の子どもたちと彼女のやり取りはとても微笑ましいものだった。