俺はあえて昼ご飯を食べてから家を出た。今日もきっと彼女が野球中継を見ているはず、そう思ったからだ。あまり家族以外の人と野球観戦をしたことがなかったから、先週は何だかとても楽しかった。
病室に着くと、やはり彼女は現地にいるかのような姿でテレビを前にしていた。
今日は相模シャイニーズと越後ウルブズの試合である。昨日の試合で、相模シャイニーズは越後ウルブズに敗れているため、相模シャイニーズにとっては今日の試合は勝ちたいところだ。だから今日の彼女はよりいっそう力が入っているようだった。
「え、うそ! 今のはストライクだって!!」
「差し入れ…ここに…」
「あ、ありがとうございます。ってか今それどころじゃ! えっまじかーーー!!」
1回の表、シャイニーズのエース東堂が早速崩れ、ノーアウト満塁から押し出しで失点してしまった。彼女は分かりやすく頭を抱えていた。