「お、サンキュー。まぁなんだかんだ大会まで1か月きってるし。今が踏ん張りどころだからなー。」
鮫島にそう言われて、俺は壁に掛かっているカレンダーを見た。
日々増えていくバツ印。
今日は6月17日。大会初戦は7月14日だから、鮫島の言う通り、もう1か月もない。
俺が6月17日の欄に、ペンでバツ印を付けていると、鮫島がまた口を開いた。
「俺は陽介とバッテリーを組めて幸せだったよ。うわぁぁぁ」
鮫島は顔を手で覆って、泣く真似をした。
「なんだよそれ。もう負けたみたいな言い方。」
「負けた時の予行練習だよ。ほら陽介も一緒に!」
「俺はやらねーよ。」
俺が鼻で笑うと、鮫島は手を叩いて笑った。
だけど、すぐ真面目な顔になった。
「俺らは負けない。絶対に甲子園に行ってみんなで笑うんだ。この夏を簡単に終わらせるわけにはいかない。」
鮫島はおちゃらけた奴だけど、誰よりも熱意があった。俺らは強豪だが、そう簡単に甲子園に行けることはない。
ベスト4にまでなると、どこが優勝してもおかしくないような強豪ばかりなのだ。
一昨年は準決勝、去年は決勝で敗退した。俺らは先輩たちの涙を見てきている。悔しい思いだってしてきた。
鮫島は去年の夏の大会、大事な局面でヒットを出せなかった。その悔しさを今までの練習に全てぶつけてきた。
だから余計に負けたくはない。俺だって同じ気持ちだ。自分たちの努力を勝って肯定したいんだ。