日暮れ時まで俺は真結さんについてたくさんの情報を得た。食べることと野球観戦が好きなこと。食べられるものは基本何でも食べるけど、トマトだけは苦手なこと。サーフィンはできるけど、運動神経が悪く、ボールが上手く投げられないこと。
3年前の13歳の時、塩アレルギーであるとわかって、それからずっと入院生活を送っていること。でも、いつか治ると信じて前向きに過ごしていること…
「日も暮れたし、そろそろ花火やりましょうか!」
そう言って立ち上がった彼女の足は、歩くのも辛そうなほど痩せ細っていた。
彼女はいつも明るく振る舞っているけれど、病気のことを聞けば聞くほど、その明るさは無理をしているような気がしてならない。俺が怪我をした時鮫島が声をかけてくれたように、俺にも何か出来ないかと考えてしまう。
「バケツに水、汲んできました」
「うわー! ありがとうございます! こちら、火の準備も完了しました!」
夜空に響く俺たちの声。真っ暗な中庭には、俺たちの花火だけが輝いていた。
「すっごいきれい。夜に2人きり、だなんてなんだかロマンチックですね。ドラマみたい」
うふふと笑う彼女の横顔は俺にも幸せを分け与えてくれた。