8月ももう終わりに差し掛かっている。同時に夏休みも終わりを告げようとしていた。蝉が夏休み最後の日を謳歌するように鳴いている。
今日はスーパーで果汁100%グミを買った。食塩含有量は100g当たり0.02g。これなら彼女も食べられる。
俺は自信をもって彼女の病室に入った。汗をかいてはいけない、ということを知っていれば、この効き過ぎた冷房にももう驚かされない。
「こんにちわ」
俺が病室に入ると、彼女はベッドからゆっくりと体を起こした。
「お久しぶりです。先週はすいません、検査があって」
「いえいえ、大変ですね。あ、これ、また差し入れを持ってきました」
彼女はビニール袋の中身を見ると、目を見開いた。
「今日はゼリーじゃないんですか?」
「あ…えっと…ゼリーが、売り切れちゃってて…」
「もしかして、私の病気のこと知っちゃいました?」
彼女に図星をつかれ、もうごまかしが利かなくなった。
「すいません。先週来た時に、かな…お兄さんから話を聞いて」
「そうだったんですね。だとしたらすごい気を遣わせちゃいましたね」
「あ、いえいえ。こちらこそ何も考えずに差し入れ持ってきてすいませんでした」
俺は深々と頭を下げた。それを見た彼女は思いきり首を横に振った。
「そ、そんな謝らないで下さい! 病気のことちゃんと伝えなかった私のせいですし…それに…少し嬉しかったんです。あのゼリーは今はもう食べられないけど、思い出が詰まっているので」
「思い出…ですか?」