「大場もありがとうな。俺の代わりに投げてくれて。」
大場だって、突然投げることになって困惑しただろう。
「いやいや。マウンドに立って、改めて陽介の凄さを実感したよ。陽介はいつもクールに投げていたけど、俺はもう緊張でガックガクで。」
大場は首を横に振りながらそう言った。
「結構調子良かったように見えたけど?」
「確かに調子は良かった。けど、終盤になって、勝ちが見えてくると余計に緊張しちゃって。疲れも出てきて。結局勝てなかった。」
大場の口調から悔しさが滲み出ていた。
「俺はまた、陽介のピッチングが見たい。もはや俺も、陽介のファンみたいなもんだからさ。あと、またいつか野球しよーぜ。」
大場は歯を見せて笑うと、後輩に呼ばれて行ってしまった。
怪我をして、今までの日常が全部無くなって、初めて仲間の偉大さに気づいた。俺が知っているよりも、ずっとたくさんの人にたくさん支えられてきたんだろうな。