「ごめん、言いたくなかったらそれで」
「違うの」
 勝手に声が出たのは初めてだった。

「自分でもよくわかんないの。ただ……昨日告られてたよね?あれはどうなったの?」
 勢い任せに言いたいことを言って、心持ちすっきりした私の前で、山内は目を丸くしていた。

「え?あ______あれ」
 どこかで望んでいた答えが、

「断った」

 返ってきた。
 もう十分だよ。

「だって、俺のことずっと見ててくれたのはあの子じゃないし」

 隣の空気が動いて、山内が立ち上がった。見上げる顔が、少し紅潮している。

 それがなぜなのかは、もうよかった。

 山内が大きく膨らませた拳を突き出して、私に手を出させる。

 その瞬間、大きな手からばらばらっと、色とりどりの大粒の雨が降ってきた。
 両手でも足りず零してしまったキャンディが、また足の上に転がってくる。

「甘いもんって、リラックス効果あるらしいから」

 空になった手が、ピースサインを作った。
「何か悩んでんならいいかなって思って」

「……ありがとう」
 めいっぱいの笑顔がこみ上げてきた。

 一粒だったキャンディが、たくさんになって、混ざり合って、そのぶん太陽の光を受けて、さっきよりもきらきらしていた。