深いため息を吐いて、体育館の裏口に腰を下ろす。

 ……長い茶髪を揺らす、可愛い女の子だった。
 山内も、まんざらでもなさそうに見えた。あの子とどうなったのか確かめたいけど、もし、告白を受けていたら……そう考えるだけで、自分の気持ちが否定されているようで苦しい。

 ただ、”いちばん”なだけのはずなのに。

 ふいに、こつん、と何かが頭を弾いた。

 膝の上に転がってきたそれをつまみ上げると、見覚えのあるキャンディ。まじまじと半透明の球体を見つめていると、吹き出すような笑い声が聞こえた。

 ”いちばん”の声だ。

「そんな睨んだって、そいつは喋んないよ」

 体育館の外側に立つ山内が近づいてきて、影をつくる。
「つかお前、来るの早すぎだって。まだ練習まで30分以上ありますけど」
「別に。あたし、マネだし。そっちこそなんでこんな早いの?」

 急に視界が眩しくなって目を閉じる。
 山内が移動して隣に座っていた。

「お前にお礼言いたかったから。いつも早いし……まさかこんなに早く来てるとは思わなかったけど」
「お礼?」
 私は目を瞬かせた。

 山内が私の手の中を指さす。太陽の光を反射させて、手の中でセロハンが光っている。
「お前がくれた飴、マジで効果あった。おかげでちゃんと全力出せたし。ありがとな」

 キャンディに触れている指先から、心地良いしびれが広がって、ふわふわしてきた。

「俺ずっとあがり症のことで悩んでたけど……気にかけてくれて嬉しかった。人のこと、よく見てるのな」

 その言葉に、かぁっと熱が上っていく。訊きたいことも不安もあったはずなのに、山内がくれた言葉がただただ嬉しくて、満たされていた。

「それに……」
 急に山内が真剣な顔つきになって、思い出したように不安がよぎる。

「何かあったんじゃないかと思って」
「……」
「昨日、変だったし。今も明らかに元気ないし。気になってしょうがなくて」
 そこまで言って、山内は言葉を切った。