「花火も残り少ねぇみてーだし、俺らもそろそろ戻るか。外ならその顔も誤魔化せるだろ」
「も、もう大丈夫でしょ」
「…………」
前を歩いていた怜央が途中で足を止めて振り返る。
「まだ赤い?」
目があって首を傾げた私の唇に怜央はキスを落とした。
瞼を閉じる時間すら与えられなかった私の目の前で、怜央の銀色の髪が揺れる──。
「さっき邪魔された分」
彼女歴1か月半の私に今日、2回のキスを察知することはできなかった。
彼の行動はいつだって予測不能で、簡単に私の心をかき乱す。
「……戻るには、もう少し時間が必要かも」
「じゃあ、もう少しここでのんびりするか」
自然と視線が交わって、指が絡む。
髪におでこに、熱くなった頬に、また怜央からのキスが降ってきて、今度は彼の瞳に映る自分を見ながら瞼を閉じた。
遠くに花火の音を聴きながら────。
fin.
(最後までお読みいただきありがとうございました!物語は大きく変わりませんが、台詞や最後の展開が少し異なる短編ver.も引き続き公開中です)