でも唯菜は、そのどちらともちがう。
 はじめて会ったとき、アイツは俺のことちらっと見ただけで、なんの興味も示さず素通りした。

 へぇ、そんなヤツもいるんだ。
 素直にそう思った。

 自意識過剰とか言うなよ?
 文句があるなら、今まで俺を取り巻いていた環境に言ってくれ。

 本音を言うと、実家で姉ちゃんたちにこき使われ、虐げられていたときよりも、今の生活は数百倍マシだ。

「ポテチ? クッキー?」
「ポテチ! チーズ味のヤツ」
 俺が夜食の候補を唯菜に掲げて見せると、即座に返事が返ってくる。
「チーズ味のヤツは、この前食ったからないって。今日はうすしおな」
「えー、もう。じゃあ、うすしおでいいよぉ」

 不満げに口をとがらせるけど、それ以上文句は言わず素直に食うんだよな。
 これが姉ちゃんずだったら、「今すぐコンビニ。れっつごー!」だ。
 ああ、なんて平和なんだ、俺の日常。