「――おまえらが、唯菜を傷つけたんだな?」
 ぎょっとした顔で立ち尽くすアイツらの前に立つと、今までに聞いたことのないような低い声で蓮が言う。
「おまえらのせいで、唯菜がどれだけ傷ついたか――どれだけ辛い思いしたかわかってんのかよ。そんなことも知らないで、よくそんなこと言えるよな」
 あたしは、必死に蓮の腕にしがみついた。
「ねえ、もうやめてってば。みんな見てるよ!?」
 イベントに集まった人たちが、あたしたちの周りを遠巻きに取り囲んでいる。
「こういうヤツらには、ちゃんと言わなきゃ一生わかんねえんだよ!」
 珍しくイラついた声で、蓮があたしに言い返した。

 そのとき――。

「汐見」

 男子集団の中から、ひとりの男子が一歩前に出た。
 同中のあの男子集団の中では、一番おとなしいイメージだ。
 たしか名前は西崎。

「ほんとごめん!」
西崎が、斜め掛けしたワンショルダーの紐をぎゅっと握りしめて頭を下げる。
「俺、中学の頃……ずっと汐見のことが好きだったんだ。だから……ほんとはこいつら、俺のことをからかおうとしてやっただけだったんだ。汐見にあんな迷惑かかるなんて、全然考えてなかった。謝ったって、許してもらえるようなことじゃないってわかってる。だけど……本当に、ごめんなさい」
 そう言い終えると、西崎がもう一度頭を下げた。