「なあ、あれって汐見じゃね?」
 また少し離れたところから、あたしの名前を呼ぶ声がした。

 今の声――。

 すーっと血の気が引いていくのを感じる。

「一緒にいるのってさ」
「あー、アイツ七海学園じゃなかったっけ? ひょっとして、“運命の相手(パートナー)”ってヤツ?」
「うわっ、マジで!? ってか、すげーよな、あの学園。卒業と同時に入籍とかさ。わけわかんねー」
「さすがにあんな写真一枚でアイドル引退したときはビビったけど、運命の相手(パートナー)が見つかったんなら、逆に俺らのおかげじゃね?」

「……早く行こ」
 蓮の左腕をぐいっと引っ張ったけど、びくともしない。
「あんなヤツら、放っておけばいいんだって。ほら、早く行こうよ」
「……放っておけるわけねえだろ」
 怒りを押し殺したような声でそう言うと、あたしの腕を振りほどいて、大股でアイツらの方へと歩き出した。