「ってことは、辞めたんだ。なんで?」

 蓮が尋ねると、唯菜はさっと表情をこわばらせた。

「……知りたきゃ、勝手に調べれば?」

 低い声でそう言うと、「蓮がそっち使ってんなら、あたしこっち使うねー」と言って、右側のロフトに上がっていった。

「別に辞めた理由なんか興味ねーし。だいたい俺、アイドルに興味ねーし」

「あっそ」

 蓮にそっけなく返したあと、「うわぁ、意外と広いじゃん。持ってきたぬいぐるみ、全部並べられそうでよかったー」などと楽しそうに大きな独り言が続く。

「……俺の方こそ新鮮だわ、その塩対応」

 そう言うと、蓮は緩くウェーブのかかった色素の薄い髪をわしゃわしゃとかき混ぜた。