「……唯菜?」
 うしろから男子の声がして、びくんっと肩が跳ねる。
 おそるおそる振り向くと、蓮が立っていた。
「ど、どうしているの……?」
 伊達メガネを下にずらし、こわばった笑みを浮かべながら蓮に尋ねる。
「唯菜こそ」

 ここは、セブンオーシャンが作った『マジック&ソード』っていうゲームのコラボイベント会場の入り口なんだけど……なんで蓮がこんなとこにいるの!?
 しかも、キャップに伊達メガネに大きなマスク――ちょっとは有名だっていう自覚があるから、変装だって完璧にしてきたつもりだったのに。
 うしろ姿でバレたら変装の意味ないし!

「ねえ、ひょっとしてだけど、蓮の用事って、これだったわけ?」
「唯菜もやってんの? マジソー」
「や、やってないわよ。ただ、セブンオーシャンのヤツだから、蓮もいないし、ひとりで暇だったし、どんなんか敵情視察――みたいな?」
 しどろもどろになりながら、言い訳の言葉を並べ立てる。
「そっかー。やっぱ勉強熱心なヤツはちがうなー」
 感心したように言う蓮に、ズキッと胸が痛む。