「えっ。ひょっとして、あたしのこと、知らないの?」

「は? 知るわけないだろ。今会ったばっかなんだからさ」

「えーっ、ちょっと、なにそれ。逆に新鮮なんですけど。あたしは、汐見唯菜。よろしくねー」

 なんだかご機嫌な様子で名乗ると、「へー、そっかそっか。そう来たかー」とつぶやいた。

「なに、あんた。ひょっとして、有名人かなにか?」

「BABY-BIRDってアイドルグループ知ってる?」

「あー、名前くらいは」

「なあんだ、知ってるんだ。あたし、前にBABY-BIRDのセンターやってたんだよ」

「へー、すげーじゃん。センターって、めちゃくちゃ人気なきゃできないんだろ?」

「ふふっ、まあね。ま、今はただの汐見唯菜だけど」