「ちがうならちがうって、なんでちゃんと言わないんだよ」
 今日のことがどうにも納得できなくて、部屋に戻ってから俺は唯菜に怒りをぶつけた。

 あー、なにやってんだよ、俺。
 一番傷ついてるのは唯菜だってのに。

 床にあぐらをかいて座り込むと、わしゃわしゃと髪をかき混ぜる。

「……おまえさあ、本当ははめられたんじゃねーの?」
 俺がぼそりと言うと、唯菜ははっと息を飲んだ。
「な、なんのこと?」
「とぼけてもムダだって。みんな、初日から唯菜のウワサしてたろ」
「……」
「規則破ってカレシ作るとかさ。そんなの全然唯菜らしくない」
「……あのときは誰も信じてくれなかったのに……なんで今頃そんなこと言うのよ、バカっ」
 いつも強気な眼差しを放つその瞳からぽろりと涙が一粒こぼれ落ち、気づいたら俺は、顔をうつむかせた唯菜をがばっと抱き寄せていた。