「ねえ、蓮。英語の予習見せてくれない? 自分の合ってるか自信なくなってきちゃった」
「お、おう。……悪い。俺、行くな」
 ボディタッチ女が不服げにあたしの方を見てくるけど、そんなの超慣れっこだし。

「男なら誰でもいいなら、蓮くんじゃなくてもいーじゃん」
「ねー、言えてる」

 あー、はいはい。今度は陰口ですか。
 でも残念ながら、今蓮とカップルなのはあたしなんですー。

 腹の中で、こっそりべーっと舌を出す。

「おい、今のは――」
「いーから。あたしのこと庇ったりしたら、余計炎上するだけだから。放っとけばいーんだって」
 振り返ってなにか言い返そうとする蓮の腕をぎゅっと掴むと、蓮にだけ聞こえるように言う。
「でも……」
 眉をぎゅっとひそめる蓮に、あたしはにこっと笑って見せる。
「予習、見せてくれるんでしょ? ほら、もうすぐ授業はじまっちゃうから。早く行こっ」
 笑顔を張り付かせたまま蓮をぐいぐい引っ張って席に戻ると、自分の席に無理やり座らせた。