(しまった……)

「吾妻副社長、わたしが施したんですから、映えるのは当然です」

三宅が話をまとめてくれた。
三宅は化粧部員の資格もとっており、本当に努力家な人だ。

睨みを飛ばされるのは日常だが、それは日頃、文の仕事に対しての激であって、陰湿な嫌がらせはしてこない。
仕事を選ぶようなこともしないし、頼まれた仕事は完璧に熟す。

それ故、文の変身に関しても、「完璧な女に仕上げて見せる」とかなりの気合いを入れてくれた。

「引きこもりが功を奏したようで、肌が白いから化粧ののりは良いし何色乗せても発色がいいんですよ。酷使していないから、赤ん坊のようにモチモチですしね。髪の毛も染めたこともないみたいで痛みもなくてサラサラ……少しはヘアアイロンくらい使ってもバチはあたりませんよ」

褒めているのか貶しているのかという微妙なコメントだが、三宅の手によって変身したのは間違いない。

「ありがとうございます」

「仕事なのでお礼は不要です。FUYOUの秘書兼同伴役だなんて、みんなに見られるんですから。秘書課の威厳をしっかり守ってくださいね」

「う……」

しっかりプレッシャーをかけられる。
秘書扱いとはいえ、三宅のドレスも美しかった。

ゴージャスに見えてしまうのは本人に華があるからだろう。堂々として格好いい。

「大山専務の息子さんと結婚させられそうだって聞きましたけど」

三宅は文を憐れんだ。