多方面から、鈍くさい、そのプロポーションでどうやって取り入ったのだなどと悪評は色々と聞くし、化粧にまで駄目出しがあった。

文が好きなのは基礎化粧品であって、飾るのが好きなわけではないのだが、立場上、苦手な化粧を毎日しなくてはいけない。

三宅の刺すような視線に、体を小さくする。

(副社長のところのデスクで電話取ればよかったかな)

文は秘書課だけの部屋と、副社長室の二カ所にデスクを持っている。

パソコンを持ち歩き、都度、都合の良い方で働いているのだが、秘書課デスクは同僚たちが目を光らせ嫌味を言われるし、執務室だと七生にくどくどと説教される。

社外の人間なのに他の仕事はないのだろうか。
今は訴訟問題もないはずなのに、なぜいつも居るのだろう。

七生の指摘が一番細かくて口煩い。
そんな仕事のやり方ではクレームが増えるだとか、炎上案件にさらに油を注ぐなだとか、危機管理意識がとか、とにかくご指導は毎日だ。

間違った日本語を使っていると言葉遣いへの指摘もあり、尊敬語だか謙譲語だか知らないが、文章ならともかくそんな正確に会話なんて出来ない。

毎日頭がパンクしていた。

「では、十四時でよろしくお願いいたします」

何とか調整でき、ほっと息をついて受話器を降ろす。

「旭川さん」

すると、背後から声がかけられてビクッとした。
七生だ。

「っは、はいっ」

副社長室に居たはずなのに、いつのまにこの部屋に。