同時に二つの仕事を並行するのも苦手だ。

ただでさえ接客は不得意なのに、電話対応はマストでなければならない。
片手で電話対応しつつ、右手で管理職たちのスケジュールを確認し、ポイントや会議を打ち込んでゆく。

文字の打ち込みも会話もゆっくりな文はそれだけの作業でも他の人達より時間をかけてしまっている。
頭の中では移動時間を計算し、期日までに事案を消化できるよう、パズルのように仕事を組み立てて行かなければならない。

それには会合場所などの立地も把握しておかなければならない。
取引先の社名は当然のこと、顔、名前、肩書きまで頭にたたき込む。

文字は記憶すれば良いだけだが、顔を覚えるのが遅かった。
写真だけで覚えなくてはならないこともあるが、俯きがちで、人の顔を見れない性格にも原因があった。

「ーーーー少々お待ちください……水曜の十五時からでしたら……あっ、無理? あ、そうでした先程仰ってましたね、申し訳ありません。ええと、十四時にしたらいかがです?」

聞いたばかりの先方の予定がものの数分ですっとんでいた。
一時間は押さえたておいた方が良いだろう。

先週、少しだけ時間が欲しいを真に受けて、予定を三十分しか取っておかなかったら、随分と殿様な仕事をしているものだと怒られてしまった。

カチカチと無駄にマウスをクリックし、業務の隙間を見つける。
役職がついている人は忙しい人達ばかりで、二人だけで会うならまだしも、数人の予定を合わせるのは大変であった。

前倒しにすればなんとか副社長も空いていることを確認すると、スケジュールをねじ込んだ。