お昼休みも、現在半分が過ぎていた。
「ふうっ、今日は体育もあったし、特別お腹も空いていたからお弁当も美味しく食べられたよ」
真子はそう言いながら、食べ終えた弁当箱を片づけていた。
「2、3時間目に体育があるなんて本当に反則だよ。お陰で4時間目の英語はお腹が鳴りそうだったんだから。先生達も、もっとよく考えて時間割を作って欲しいよね」
紗智もそう言いながら、お弁当を食べる為に寄せ集めていた机を戻していた。
「さてと、私はそろそろ4組に行ってくるね」
響歌達とお弁当を食べていた女子生徒の1人が、そう言い残して5組から出ていった。
「相変わらず早いねぇ、亜希ちゃんは」
真子がお弁当を片づけながら、のんびりした口調で言った。
真子に同意するのは響歌だ。
「本当だよね。あのスピードは、確かに凄い」
「でも、行くのなら早くしないと昼休みが終わってしまうよ。放課後以外は昼休みくらいしか4組のみんなと話せないんだし、私達も早く行こう」
紗智は既にお弁当箱も片づけていて4組に行く準備は万端だ。響歌と真子も、そんな紗智に急かされるように素早く立ち上がった。のんびりしていると本当に昼休みが終わってしまう。
その時、歩が5組にやってきた。
「歩ちゃん!」
珍しい来客に、響歌は驚いた。紗智と真子も同様だ。
2年になってからは長い休憩時間の時は響歌達が4組に出向いているので、歩が5組に来る必要は無い。何か用事があるにしても、響歌達が来るまで4組で待っていればいいのだ。現に今も響歌達は4組に向かおうとしていた。既に亜希は4組に着いているだろう。
それなのにわざわざ5組に来た。しかも走ってここまで来たのだ。歩はのんびりとした女の子だったので、こんなことは滅多に無い。いや、これまでまったく見たことが無かったような気がする。
「どうしたのよ、歩ちゃん。5組に来るのはもちろんだけど、走ってきたなんて珍しいね?」
真子は思いをそのまま口にした。
「何かあったの?」
紗智は心配そうだ。
歩がこんな状態になっているのだ。ただ事ではない。そう思ったのだ。
歩はそんな2人を無視して響歌に詰め寄った。
「響ちゃん、橋本君に告白したんだって?」
衝撃的な言葉に、紗智と真子は仰天した。
「ムッチーから聞いたのね」
歩が興奮しながら響歌の言葉に頷くと、響歌は力無く席に座った。
もちろん歩の言葉を聞いて紗智と真子が黙っているわけがない。
「ちょ、ちょっと、響ちゃん。どういうことになっているの?」
紗智が声を抑えて響歌に問う。
「橋本君に、本当に告白したの?」
真子も興味津々だ。
そんな彼女達の質問に答えたのは、当人ではなくて歩だった。
「今日の2時間目の終わりにムッチーから聞いたの。響ちゃん、橋本君に自分の気持ちを書いた手紙を昨日の朝渡したんだって。でね、ここからが肝心なの。昨日の放課後、響ちゃんは橋本君と一緒に帰ったみたいなんだけど、その時に響ちゃんったら、橋本君の返事を聞かなかったの。橋本君が『手紙の話をしよう』って言ってくれていたというのに!」
歩の顔が真っ赤になっている。今朝の舞と同じ状態だ。
そのまま怒涛のように話し続ける。
「だけどね、そんな響ちゃんに、橋本君は『一応YESとしておく』って言ってくれたの。すっごく展開が早くない?」
歩は興奮していたが、それを聞いた2人も冷静にはいられなかった。
「響ちゃん、それ、本当?」
真子も興奮しているし、紗智は響歌に詰め寄ったままだ。
2人に押されるように響歌は言った。
「…本当」
「やったじゃない、響ちゃん!」
紗智が響歌の左肩を叩く。
「おめでとう、響ちゃん!」
真子は響歌の右肩を叩いた。
2人に手荒な祝福をされたが、響歌は複雑そうだ。
紗智がすかさずそれに気づく。
「どうしたのよ。告白が上手くいったのにそんな顔をして。もっと喜ぼうよ」
「だって…YESとは言われたけど、その前に一応が付くのよ。なんか素直には喜べなくって」
今朝、舞に言ったことをここでも言った。
それに反論するのは、すべてを聞いた歩だ。
「それは響ちゃんが悪いんでしょ。橋本君がせっかく返事をしようとしているのに断っちゃうんだもん。それでも『一応YESにしておく』と言ってくれたということは、橋本君も響ちゃんに早く返事がしたかったんだよね。それなのに響ちゃんが恥ずかしがるから返事ができない。でも、早く伝えたかったから一応って付けたんだと思うよ。ムッチーの話だと『お前が真面目な時に返事をする』とも言っていたみたいだしね」
「それはそうなんだけど…」
歩にも舞と同じような言葉を言われて、響歌は肩身が狭くなった。
そんな響歌に追い打ちをかけるのは紗智と真子だ。
「一応っていっても、それだとほとんどOKということだよね!」
真子は興奮しながら言った。
「そうだよ、そんなの『つき合ってもいい』と言われたものじゃない。それにそんなに一応という言葉が気になるのなら、もっとちゃんと橋本君から返事を聞いておけば良かったでしょ!」
紗智は真子に同意しながらも、響歌に対して辛辣だった。
響歌は3人のパワーに圧倒されていた。反論する気力も無い。朝、舞に同じように責められたので余計そうなったのだ。
そんな響歌を助けてくれたのは、まだ興奮状態が抜け切れていない歩だった。
「まぁ、響ちゃんも自分の言動に反省しているみたいだし、ここは大目に見てあげようよ、さっちゃん。橋本君の返事なら、響ちゃんが真面目になったら聞けるみたいだしね。取り敢えずはおめでとうってことだよ。5人の中でまた1人忙しくなって遊べなくなるのは残念だけどね」
「そんなぁ、別に忙しくなんないって。歩ちゃんも大袈裟だなぁ」
響歌は反論したが、現に舞に彼氏ができてから5人で遊ぶ機会が減っていた。響歌にまで彼氏ができたら今以上に遊ぶ機会が減るだろう。
「私達に遠慮しなくてもいいよ。橋本君とつき合うことになったら、私達のことは気にせずに橋本君の為に時間を使って。私達には今度何かをおごってくれるだけでいいから、ね?」
歩が響歌に向かって微笑んだ。
紗智と真子もニヤニヤしながら響歌を見ている。既におごってもらう気満々だ。
「わかった。今度何かおごるよ」
脱力しながらも、こう言うしかなかった。
「ふうっ、今日は体育もあったし、特別お腹も空いていたからお弁当も美味しく食べられたよ」
真子はそう言いながら、食べ終えた弁当箱を片づけていた。
「2、3時間目に体育があるなんて本当に反則だよ。お陰で4時間目の英語はお腹が鳴りそうだったんだから。先生達も、もっとよく考えて時間割を作って欲しいよね」
紗智もそう言いながら、お弁当を食べる為に寄せ集めていた机を戻していた。
「さてと、私はそろそろ4組に行ってくるね」
響歌達とお弁当を食べていた女子生徒の1人が、そう言い残して5組から出ていった。
「相変わらず早いねぇ、亜希ちゃんは」
真子がお弁当を片づけながら、のんびりした口調で言った。
真子に同意するのは響歌だ。
「本当だよね。あのスピードは、確かに凄い」
「でも、行くのなら早くしないと昼休みが終わってしまうよ。放課後以外は昼休みくらいしか4組のみんなと話せないんだし、私達も早く行こう」
紗智は既にお弁当箱も片づけていて4組に行く準備は万端だ。響歌と真子も、そんな紗智に急かされるように素早く立ち上がった。のんびりしていると本当に昼休みが終わってしまう。
その時、歩が5組にやってきた。
「歩ちゃん!」
珍しい来客に、響歌は驚いた。紗智と真子も同様だ。
2年になってからは長い休憩時間の時は響歌達が4組に出向いているので、歩が5組に来る必要は無い。何か用事があるにしても、響歌達が来るまで4組で待っていればいいのだ。現に今も響歌達は4組に向かおうとしていた。既に亜希は4組に着いているだろう。
それなのにわざわざ5組に来た。しかも走ってここまで来たのだ。歩はのんびりとした女の子だったので、こんなことは滅多に無い。いや、これまでまったく見たことが無かったような気がする。
「どうしたのよ、歩ちゃん。5組に来るのはもちろんだけど、走ってきたなんて珍しいね?」
真子は思いをそのまま口にした。
「何かあったの?」
紗智は心配そうだ。
歩がこんな状態になっているのだ。ただ事ではない。そう思ったのだ。
歩はそんな2人を無視して響歌に詰め寄った。
「響ちゃん、橋本君に告白したんだって?」
衝撃的な言葉に、紗智と真子は仰天した。
「ムッチーから聞いたのね」
歩が興奮しながら響歌の言葉に頷くと、響歌は力無く席に座った。
もちろん歩の言葉を聞いて紗智と真子が黙っているわけがない。
「ちょ、ちょっと、響ちゃん。どういうことになっているの?」
紗智が声を抑えて響歌に問う。
「橋本君に、本当に告白したの?」
真子も興味津々だ。
そんな彼女達の質問に答えたのは、当人ではなくて歩だった。
「今日の2時間目の終わりにムッチーから聞いたの。響ちゃん、橋本君に自分の気持ちを書いた手紙を昨日の朝渡したんだって。でね、ここからが肝心なの。昨日の放課後、響ちゃんは橋本君と一緒に帰ったみたいなんだけど、その時に響ちゃんったら、橋本君の返事を聞かなかったの。橋本君が『手紙の話をしよう』って言ってくれていたというのに!」
歩の顔が真っ赤になっている。今朝の舞と同じ状態だ。
そのまま怒涛のように話し続ける。
「だけどね、そんな響ちゃんに、橋本君は『一応YESとしておく』って言ってくれたの。すっごく展開が早くない?」
歩は興奮していたが、それを聞いた2人も冷静にはいられなかった。
「響ちゃん、それ、本当?」
真子も興奮しているし、紗智は響歌に詰め寄ったままだ。
2人に押されるように響歌は言った。
「…本当」
「やったじゃない、響ちゃん!」
紗智が響歌の左肩を叩く。
「おめでとう、響ちゃん!」
真子は響歌の右肩を叩いた。
2人に手荒な祝福をされたが、響歌は複雑そうだ。
紗智がすかさずそれに気づく。
「どうしたのよ。告白が上手くいったのにそんな顔をして。もっと喜ぼうよ」
「だって…YESとは言われたけど、その前に一応が付くのよ。なんか素直には喜べなくって」
今朝、舞に言ったことをここでも言った。
それに反論するのは、すべてを聞いた歩だ。
「それは響ちゃんが悪いんでしょ。橋本君がせっかく返事をしようとしているのに断っちゃうんだもん。それでも『一応YESにしておく』と言ってくれたということは、橋本君も響ちゃんに早く返事がしたかったんだよね。それなのに響ちゃんが恥ずかしがるから返事ができない。でも、早く伝えたかったから一応って付けたんだと思うよ。ムッチーの話だと『お前が真面目な時に返事をする』とも言っていたみたいだしね」
「それはそうなんだけど…」
歩にも舞と同じような言葉を言われて、響歌は肩身が狭くなった。
そんな響歌に追い打ちをかけるのは紗智と真子だ。
「一応っていっても、それだとほとんどOKということだよね!」
真子は興奮しながら言った。
「そうだよ、そんなの『つき合ってもいい』と言われたものじゃない。それにそんなに一応という言葉が気になるのなら、もっとちゃんと橋本君から返事を聞いておけば良かったでしょ!」
紗智は真子に同意しながらも、響歌に対して辛辣だった。
響歌は3人のパワーに圧倒されていた。反論する気力も無い。朝、舞に同じように責められたので余計そうなったのだ。
そんな響歌を助けてくれたのは、まだ興奮状態が抜け切れていない歩だった。
「まぁ、響ちゃんも自分の言動に反省しているみたいだし、ここは大目に見てあげようよ、さっちゃん。橋本君の返事なら、響ちゃんが真面目になったら聞けるみたいだしね。取り敢えずはおめでとうってことだよ。5人の中でまた1人忙しくなって遊べなくなるのは残念だけどね」
「そんなぁ、別に忙しくなんないって。歩ちゃんも大袈裟だなぁ」
響歌は反論したが、現に舞に彼氏ができてから5人で遊ぶ機会が減っていた。響歌にまで彼氏ができたら今以上に遊ぶ機会が減るだろう。
「私達に遠慮しなくてもいいよ。橋本君とつき合うことになったら、私達のことは気にせずに橋本君の為に時間を使って。私達には今度何かをおごってくれるだけでいいから、ね?」
歩が響歌に向かって微笑んだ。
紗智と真子もニヤニヤしながら響歌を見ている。既におごってもらう気満々だ。
「わかった。今度何かおごるよ」
脱力しながらも、こう言うしかなかった。