紗智達の姿が見えなくなると、響歌は中葉の背中を睨んだ。
「まったく…中葉君ったら」
「目立つ行動は止めて欲しいよね」
舞も目を吊り上げていた。
ただでさえドキドキしながら毎日を過ごしているのに、こんなことをしているとバレる確率が高まってしまうじゃないの!
2人が睨むように見ている中、中葉は帰る準備をしている。
響歌が小さく呟いた。
「やっぱり一番いいのは、まっちゃんが高尾君から他の人に心変わりすることだよね」
「でも、響ちゃん。それって可能なの?」
そりゃ、私もそれが手っ取り早くていいと思うけどさ。
「ま、今はまだ無理よね」
「同じクラスだから、毎日会えるもんねぇ」
「そういえばムッチーって、まっちゃんの消しゴムのことは知っている?」
「えっ、まっちゃんの消しゴム?」
「まっちゃんってば、自分の消しゴムに高尾君の名前を書いているのよ」
…は?
「消しゴムに他人の名前なんて書いてどうするの。まさかそれを高尾君にプレゼントするの?」
だから名前を書いたのだろうか。
「違う、違う。多分、昔流行ったおまじないをしているのよ。新品の消しゴムに好きな人の名前を書いて、それを誰にも触らせないようにして全部使いきるの。そうしたら恋が実るんだってさ。まっちゃんってば、乙女だよねぇ」
響歌が呆れながら説明した。
まぁ、響ちゃんが呆れるのも無理はないよ。
恋のおまじないは女の子が好きなものの一つだけど、さすがにそれを実行している人なんてそういないよ。いたとしても小学生や中学生までだ。
それでもそういうのをしながら彼に近づけるように頑張っているのなら、まだわかる気がする。
でも、まっちゃんはそういった努力をせず、おまじないに頼っているということでしょ。
しかもその消しゴムって、やっぱりアニメのものなのよね。
…なんだか使う度に恋が遠のいていくような気がする。
「ある意味、凄いね。まっちゃんって…」
「それとさぁ、これはさっちゃんから聞いたことなんだけど…」
まだ何かあるの!
「ムッチーもまっちゃんが高尾君に年賀状を出したことは知っているはずだけど、その後に高尾君からまっちゃんに年賀状が届いたみたいよ」
「えぇっ、それはビックリだよ。だってそれって返事してくれたってことでしょ。高尾君って、意外と律儀だったんだね」
「私も驚いたわよ。可愛い子にしか興味が無いと思っていたのに、どうでもいい人にも返事を出していたんだもの」
そうか、響ちゃんも驚いたのか。
まぁ、そりゃ、そうよね。まっちゃんの気持ちを知る前から、高尾君のまっちゃんへの印象は悪かったというもの。
そんな相手に返事を出したなんて、言葉と行動がうらはらではないか!
舞は高尾の行動に驚きながらも、その一方で彼の気持ちもわかるような気がした。
いくら中身は良くても、やはり教室内での真子は暗いのだ。その机の上にはアニメグッズが勢揃い。しかも恋する乙女なのにオシャレには興味がないのか、髪の毛がいつもボサボサだ。髪質に問題があるのかもしれないが、それにしたって整髪剤で整えればなんとかなるはずなのに、そういった類を使っている形跡はまったく無い。
絶対に口には出さないが、正直に言うと真子は平井とダブッているのだ。
もちろん真子は平井に比べたら何倍もいい。優しいし、穏やかでいい人だ。
だが、冷静に見て、自分が高尾の立場になるとどうだろう。
内面は話したことが無いからわかるはずがない。だから外見で勝負するしかないわけだが、顔だけ見ればそこまで悪くないものの、大柄で髪の毛はボサボサ。しかも机の上にはアニメグッズ。
…やはり女版サトルだ。
いや、そうはいってもサトルはさすがに学校にアニメグッズは持ってきていないわよ。えっ、ということはサトルの方がマシになってしまう?
舞は平井が自分のことを好きで、その想いが自分のグループのみんなにバレた時のことを想像してみた。
…自分も高尾君と同じことを言っていそうな気がする。
いや、でも、これは私だけでも無いんじゃないの。少なくとも響ちゃんは私のように言っているはずだわ。
だって響ちゃんも、私達の前で中葉君のことを良くは言っていないもの。
ということは私達も高尾君と一緒ではないか!
自分の立場を変えてみると、なんと見方が違ってくるのだろう。
「フッ、人は所詮、勝手だってことよね」
「あんた、何言っているのよ」
響歌が怪訝な目を舞に向けている。
それでも自分が考えていたことを話すと、響歌は渋々ながらも同意した。
「確かに私も、中葉君に対して高尾君と同じようなことを言っているわね。だから私には、この件で高尾君のことを悪く言う資格は無いわ」
それは舞の方も同感である。
紗智は非常に怒っていたが、舞があそこまで怒れないのは高尾の気持ちも少しはわかるからだ。それに加えて自分がきっかけでバレたというのもある。
「まっちゃんもさぁ、顔の造作は悪くはないんだから。痩せたら可愛くなると思うし、もう少しは明るくなって、オシャレに目覚めて、アニメグッズも持ってこなくなれば、高尾君を振り向かせることもできるかもしれないけど。言うのは簡単、実行するのは難しいからなぁ」
「そうだね」
やはり成就の道は険しそうだった。
「まったく…中葉君ったら」
「目立つ行動は止めて欲しいよね」
舞も目を吊り上げていた。
ただでさえドキドキしながら毎日を過ごしているのに、こんなことをしているとバレる確率が高まってしまうじゃないの!
2人が睨むように見ている中、中葉は帰る準備をしている。
響歌が小さく呟いた。
「やっぱり一番いいのは、まっちゃんが高尾君から他の人に心変わりすることだよね」
「でも、響ちゃん。それって可能なの?」
そりゃ、私もそれが手っ取り早くていいと思うけどさ。
「ま、今はまだ無理よね」
「同じクラスだから、毎日会えるもんねぇ」
「そういえばムッチーって、まっちゃんの消しゴムのことは知っている?」
「えっ、まっちゃんの消しゴム?」
「まっちゃんってば、自分の消しゴムに高尾君の名前を書いているのよ」
…は?
「消しゴムに他人の名前なんて書いてどうするの。まさかそれを高尾君にプレゼントするの?」
だから名前を書いたのだろうか。
「違う、違う。多分、昔流行ったおまじないをしているのよ。新品の消しゴムに好きな人の名前を書いて、それを誰にも触らせないようにして全部使いきるの。そうしたら恋が実るんだってさ。まっちゃんってば、乙女だよねぇ」
響歌が呆れながら説明した。
まぁ、響ちゃんが呆れるのも無理はないよ。
恋のおまじないは女の子が好きなものの一つだけど、さすがにそれを実行している人なんてそういないよ。いたとしても小学生や中学生までだ。
それでもそういうのをしながら彼に近づけるように頑張っているのなら、まだわかる気がする。
でも、まっちゃんはそういった努力をせず、おまじないに頼っているということでしょ。
しかもその消しゴムって、やっぱりアニメのものなのよね。
…なんだか使う度に恋が遠のいていくような気がする。
「ある意味、凄いね。まっちゃんって…」
「それとさぁ、これはさっちゃんから聞いたことなんだけど…」
まだ何かあるの!
「ムッチーもまっちゃんが高尾君に年賀状を出したことは知っているはずだけど、その後に高尾君からまっちゃんに年賀状が届いたみたいよ」
「えぇっ、それはビックリだよ。だってそれって返事してくれたってことでしょ。高尾君って、意外と律儀だったんだね」
「私も驚いたわよ。可愛い子にしか興味が無いと思っていたのに、どうでもいい人にも返事を出していたんだもの」
そうか、響ちゃんも驚いたのか。
まぁ、そりゃ、そうよね。まっちゃんの気持ちを知る前から、高尾君のまっちゃんへの印象は悪かったというもの。
そんな相手に返事を出したなんて、言葉と行動がうらはらではないか!
舞は高尾の行動に驚きながらも、その一方で彼の気持ちもわかるような気がした。
いくら中身は良くても、やはり教室内での真子は暗いのだ。その机の上にはアニメグッズが勢揃い。しかも恋する乙女なのにオシャレには興味がないのか、髪の毛がいつもボサボサだ。髪質に問題があるのかもしれないが、それにしたって整髪剤で整えればなんとかなるはずなのに、そういった類を使っている形跡はまったく無い。
絶対に口には出さないが、正直に言うと真子は平井とダブッているのだ。
もちろん真子は平井に比べたら何倍もいい。優しいし、穏やかでいい人だ。
だが、冷静に見て、自分が高尾の立場になるとどうだろう。
内面は話したことが無いからわかるはずがない。だから外見で勝負するしかないわけだが、顔だけ見ればそこまで悪くないものの、大柄で髪の毛はボサボサ。しかも机の上にはアニメグッズ。
…やはり女版サトルだ。
いや、そうはいってもサトルはさすがに学校にアニメグッズは持ってきていないわよ。えっ、ということはサトルの方がマシになってしまう?
舞は平井が自分のことを好きで、その想いが自分のグループのみんなにバレた時のことを想像してみた。
…自分も高尾君と同じことを言っていそうな気がする。
いや、でも、これは私だけでも無いんじゃないの。少なくとも響ちゃんは私のように言っているはずだわ。
だって響ちゃんも、私達の前で中葉君のことを良くは言っていないもの。
ということは私達も高尾君と一緒ではないか!
自分の立場を変えてみると、なんと見方が違ってくるのだろう。
「フッ、人は所詮、勝手だってことよね」
「あんた、何言っているのよ」
響歌が怪訝な目を舞に向けている。
それでも自分が考えていたことを話すと、響歌は渋々ながらも同意した。
「確かに私も、中葉君に対して高尾君と同じようなことを言っているわね。だから私には、この件で高尾君のことを悪く言う資格は無いわ」
それは舞の方も同感である。
紗智は非常に怒っていたが、舞があそこまで怒れないのは高尾の気持ちも少しはわかるからだ。それに加えて自分がきっかけでバレたというのもある。
「まっちゃんもさぁ、顔の造作は悪くはないんだから。痩せたら可愛くなると思うし、もう少しは明るくなって、オシャレに目覚めて、アニメグッズも持ってこなくなれば、高尾君を振り向かせることもできるかもしれないけど。言うのは簡単、実行するのは難しいからなぁ」
「そうだね」
やはり成就の道は険しそうだった。