真子のことが男子達にバレてから1週間が過ぎた。

 舞はバレた翌日、中葉に響歌の返事を伝えておいた。中葉は『そうかぁ、残念だなぁ』と言っていたが、あまり残念そうに見えなかったのは気のせいだろうか。

 響歌の返事を伝えた後も、中葉は放課後になると舞達の席にやってきていた。橋本の方は相変わらず来ていない。

 響歌や紗智、そして響歌とのメッセージのやり取りで真子のことを知った歩は、しばらくの間は男子達を監視しながら毎日を過ごしていたが、高尾の方からは何も言ってこなかったし、他の男子も普段通りだったので次第に以前のように過ごすようになっていた。

 一時はどうなることかと思ったけど、これなら無事に卒業できそうね。

 舞も既に安心しきっていた。

 今日の授業も全てが終わり、楽しい放課後の時間になっている。中葉は珍しくも舞達の席に来ていないし、自分の席にもいない。男子は6時間目が体育だったのでゆっくり着替えているのだろう。

 舞達は久し振りに5人で教室に残って雑談していた。それでも紗智達が帰る電車の到着時間が迫っている。3人は自分の席に戻って帰り支度を始めた。

 その時、教室のドアが乱暴に開き、高尾が慌てながら入ってきた。そのすぐ後に中葉がスマホを構えながら入ってきた。
 真子を除いた4人の顔が引きつった。

 中葉君ってば、何をやっているのよ!

 何も知っていない真子だけが呆然として彼らを見ていた。

 彼女達が見ている中、中葉が教卓に両肘をつき、高尾の方にピントを合わせるようにスマホを覗き込んでいる。

「中葉っ、いい加減にしろ!」

 高尾が中葉の方へ走ってきた。

 刹那、フラッシュが光る。

 1枚撮り終えると、中葉がスマホを下げた。

「もう撮るなよっ!」

 高尾は吐き捨てるように言うと、これから部活に行くのだろう、スポーツバックを持って教室から出て行った。

 中葉は教卓から身を起こすと自分の席に着いた。

「なんだったんだろうね?」

 何も知らない真子が呑気そうに問う。

「さぁ」

 紗智が顔をひきつらせたまま答えた。

「さっちゃん、まっちゃん。そろそろ行かないと4時台の電車に乗れなくなっちゃうよ」

 歩ちゃん、ナイス!

 こんな時はさっさと退散させるに限る。

 舞達4人は目と目で合図をし、頷いた。

「今日も夕方から雪が降るらしいし、絶対に4時台の電車に乗ろう!」

 紗智が慌てて席を立つと、歩も後ろに吊るしてあった3人分のコートを素早く取ってきた。

「まだ間に合うと思うんだけど…まぁ、いいか。あっ、ありがとう、歩ちゃん」

 真子は不思議そうにはしていたものの、歩に礼を言ってコートを着た。

 紗智と歩も素早くコートを着る。

「じゃあ、ムッチー、響ちゃん。また明日ね」

 紗智は舞と響歌にそう言うと、教室から出て行った。

 歩と真子も2人に別れの挨拶をしてから紗智の後に続いた。