まさか響ちゃんにそんな驚きの過去があったなんて。本当にびっくりしたよ。

 そうそう、元彼とは中学2年からのつき合いだったんだって。1つ年上で、友達の紹介で出会ったみたい。

 最初から気が合ったみたいなのだけど、彼は容姿が良く、人懐っこい性格だったから、女の子に人気があったんだって。

 これって、誰かに似ているよね?

 一緒にいる時は凄く楽しかったけど、離れている時は不安で一杯だった。そんな響ちゃんの不安は見事に的中。なんと最後のあたりでは他の女の影があったみたいなの!

 近くにいてくれていたのならそのことを確かめられたのかもしれない。でも、お互いの家はかなり離れていてそれができなかった。

 彼は甘い言葉を駆使して響ちゃんの不安を取り除こうとしていたけど、その頃の響ちゃんにはもう相手の何もかもが信じられなくなっていた。

 で、ジ・エンド。

 ………うっ、うっ、うっ………なんて可哀想な響ちゃんなんでしょう!

「もう、ムッチー。なんで人の話で泣いているのよ」

「だって、響ちゃんがあまりにも哀れで!」

「悪かったわね」

 響歌は不貞腐れてしまった。

「いーや、悪いのはその男だよ。そんな男とは別れて正解だったんだから。そうだ、別れられた記念にアイスコーヒーをおごってあげるよ。響ちゃんってば、冬でも頼むくらいアイスコーヒーが好きだもんね」

 舞は涙を拭くと、近くにいた店員を呼んでアイスコーヒーを注文した。

 すぐ響歌の元にアイスコーヒーが運ばれてきた。

「さ、響ちゃん、グラスを持って」

 既に舞の手には自分が飲んでいたカフェオレのカップがある。

 響歌は仕方なくグラスを手に持った。

「たらし男との別離に、かんぱーい!」

「…乾杯」

 グラスとカップのぶつかり合う音が喫茶店内に大きく響き渡った。