あぁ、遅れる、遅れる!
8時発の電車に乗れるかしら?
いや、それにはなんとしても乗らないといけないのよ。
なんたってここは、誰が見てもきっぱりはっきり言える程の『田舎』なのだから!
都会のように5分、10分毎に次の電車なんてやってこない。次の電車が来るのはあろうことか1時間後。乗り過ごしてしまうと大遅刻。今日は入学式くらいしか無いので、1時間後の電車に乗るくらいなら帰った方がマシだ。
舞は焦りながら自転車にまたがると、自転車で片道40分程度の距離を超特急で駆け抜けていった。
最寄り駅である宮内駅が目の前に迫っている。
よかったぁ、なんとか間に合いそう。
舞がホッとしたその瞬間、横から突風が吹き抜けた。
「えっ、何?」
驚いて、吹き抜けていった先に目を向ける。
凄い風の正体はすぐに判明した。舞の超特急スピードよりも遥かに速いスピードで自転車が通り過ぎていったのだ。
呆然と見ている中、その自転車は宮内駅の小汚い自転車置き場へと入っていった。
なんて失礼な自転車なの。この私を抜かすなんて百憶光年早いのよ!
最初こそ驚いて呆然となっていたが、段々と腹が立っていき、自分を抜かした不届き者の正体が知りたくなった。
この目で、その失礼な顔を拝んでやる!
自転車置き場まで行くと、その出入口で失礼な奴が出てくるのを待つ。
そんな舞の前に不届き者が現れた。
その不届き者は、どこかの学校の制服を着た男子だった。待ち構えている舞には見向きもせずに颯爽と歩いていった。
舞の手から自転車のサドルが離れる。
自転車は大きな音を立てて倒れたが、舞は動かなかった。それにはまったく気づかずに惚けている。その頬は紅色に染まっていた。
な、なんてカッコイイの!
なんて素敵な御方なのかしら!
あの愁いを帯びた目元。スラッとした高い鼻に、しまりのある口元。そして凹凸の無い、形のいい美しい頬。
私の好きなバレー選手の赤川蓮選手に似ているじゃないの!
…でも、背は小さかったわね。もしかしたら私と同じくらいかもしれない。
ま、まぁ、とにかく背以外は完璧な美少年!
「惚れたわ」
私とあの御方が並んだら、素晴らしい絵になるに違いないわ。
あの御方、私と同じ学校なのかしらね。
いや、私と同じブレザーだったし、紺の地色に黄色の斜線が入ったタイを着けていたもの。同じ学校で間違いないわよ。
それどころか同じクラスかもしれない。
だって今日って、入学式だけだもの。2、3年生が学校に来るのは明日からだし、この駅から乗車する生徒は大抵が経済科のはずよ。
そうだとすれば…
「か・ん・げ・き!」
私とあの御方は、運命の赤い鎖で結ばれているに違いないわ。
時間は既に8時を過ぎていたが、舞はそのことにまったく気づかずに自分勝手な妄想の中で酔いしれていた。
8時発の電車に乗れるかしら?
いや、それにはなんとしても乗らないといけないのよ。
なんたってここは、誰が見てもきっぱりはっきり言える程の『田舎』なのだから!
都会のように5分、10分毎に次の電車なんてやってこない。次の電車が来るのはあろうことか1時間後。乗り過ごしてしまうと大遅刻。今日は入学式くらいしか無いので、1時間後の電車に乗るくらいなら帰った方がマシだ。
舞は焦りながら自転車にまたがると、自転車で片道40分程度の距離を超特急で駆け抜けていった。
最寄り駅である宮内駅が目の前に迫っている。
よかったぁ、なんとか間に合いそう。
舞がホッとしたその瞬間、横から突風が吹き抜けた。
「えっ、何?」
驚いて、吹き抜けていった先に目を向ける。
凄い風の正体はすぐに判明した。舞の超特急スピードよりも遥かに速いスピードで自転車が通り過ぎていったのだ。
呆然と見ている中、その自転車は宮内駅の小汚い自転車置き場へと入っていった。
なんて失礼な自転車なの。この私を抜かすなんて百憶光年早いのよ!
最初こそ驚いて呆然となっていたが、段々と腹が立っていき、自分を抜かした不届き者の正体が知りたくなった。
この目で、その失礼な顔を拝んでやる!
自転車置き場まで行くと、その出入口で失礼な奴が出てくるのを待つ。
そんな舞の前に不届き者が現れた。
その不届き者は、どこかの学校の制服を着た男子だった。待ち構えている舞には見向きもせずに颯爽と歩いていった。
舞の手から自転車のサドルが離れる。
自転車は大きな音を立てて倒れたが、舞は動かなかった。それにはまったく気づかずに惚けている。その頬は紅色に染まっていた。
な、なんてカッコイイの!
なんて素敵な御方なのかしら!
あの愁いを帯びた目元。スラッとした高い鼻に、しまりのある口元。そして凹凸の無い、形のいい美しい頬。
私の好きなバレー選手の赤川蓮選手に似ているじゃないの!
…でも、背は小さかったわね。もしかしたら私と同じくらいかもしれない。
ま、まぁ、とにかく背以外は完璧な美少年!
「惚れたわ」
私とあの御方が並んだら、素晴らしい絵になるに違いないわ。
あの御方、私と同じ学校なのかしらね。
いや、私と同じブレザーだったし、紺の地色に黄色の斜線が入ったタイを着けていたもの。同じ学校で間違いないわよ。
それどころか同じクラスかもしれない。
だって今日って、入学式だけだもの。2、3年生が学校に来るのは明日からだし、この駅から乗車する生徒は大抵が経済科のはずよ。
そうだとすれば…
「か・ん・げ・き!」
私とあの御方は、運命の赤い鎖で結ばれているに違いないわ。
時間は既に8時を過ぎていたが、舞はそのことにまったく気づかずに自分勝手な妄想の中で酔いしれていた。