店内に舞の大声が響き渡る。
「えぇー、まっちゃんって、高尾君のことが好きだったのー!」
「ちょ、ちょっと、ムッチー。声が大きい!」
驚きのあまり出た舞の大声に、真子が慌てた。
だが、驚いたのは舞だけではない。この場にいる他の3人も、大声こそ出さなかったものの、思いは舞と同じだ。
今日は1月最後の日曜日。舞達がいる場所は柏原駅の近くにある喫茶店の一番奥のテーブルだ。奥に紗智と真子が並んで座り、その対面に響歌、舞、歩が座っている。それぞれの前にはオーダーした飲み物が置いてあった。
柏原駅はいつも歩や紗智、真子達が通学の為に利用している駅だ。舞と響歌にとってはあまり馴染みがない。何しろこの駅は、宮内駅とは反対方面にある終点駅なのだから。
だから舞は、紗智達はともかく反対方面に出向くことになる響歌がわざわざ休日に来てくれるか心配だった。
いや、実際に響歌は、最初は嫌がったのだ。しかも既にその日はバイトを入れていたらしく、余計に渋っていた。
舞もその日はバイトを入れていた。それでも友情の為なら休むくらいなんでもないと、バイトを休むことにした。
だから自分も休んだのだから…と説得をし、前もって聞いていた歩の助言通り『さっちゃん達の恋愛話を聞き出してみよう』とそそのかしたら、響歌もようやく了承。
こうして舞と歩は、作戦通り他の3人を休日に誘い出して暴露大会を開催することに成功した…のだけど。
まさかしょっぱなから、まっちゃんで驚くことになるなんて!
本当に予想外だったのだ。
何しろみんな、真子が高尾と話しているところを見たことが無い。いや、真子が高尾のことを見ているところさえ見たことが無かった。しかも歩と高尾の噂の時、一番楽しそうにみんなに言いまくっていたのは、実は真子だったのだ。
「じゃあ、まっちゃんはいつから高尾君のことが好きだったのよ?」
響歌はまだ怪訝そうだった。真子の口から聞いてもまだ信じられないのだ。
「私も聞きたい。いつから、何がきっかけだったの?」
紗智も響歌と同じ思いのようだ。
真子は恥ずかしそうにクリームソーダの中のアイスをスプーンで突いている。
「あ…みんな、そんなに驚かなくても。あ、あのね、好きになったのは4月かなぁ。カッコイイ人いないかなって探していたら高尾君が目についたの。で、段々と見ていくうちに、いつの間にか…好きになってた」
歩は大好物のフルーツパフェを前にしているというのに、驚きのあまりまだ一切手につけていない。
「4月からって、また…早いね」
歩の発言に、舞がすぐ異を唱える。
「何、言っているのよ、歩ちゃん。4月からなんて普通だよ。私だって、テツヤ君を愛するようになったのは4月からだもの。しかも私の場合は入学式の時からだしね。フッ、まっちゃんに勝った」
「しっかし、まっちゃんの恋が4月からだったなんて。私もまだまだ見抜く力が無いのねぇ。全然気づかなかったわよ」
「本当だよ。私も結構鋭い方だと思っていたんだけど、修行が足りないのかなぁ」
「2人が気づかないのなんて当然だよ。私なんていつも一緒にいたのに全然気づけなかったんだから。ちょっとショックだよ。まっちゃんも早く言ってくれたら良かったのに。文化祭の時なんて滅茶苦茶チャンスあったから、知っていたら手伝えたのに。水臭いなぁ」
「ごめんね、さっちゃん。でも、やっぱりなかなか言えなかったんだよ。特に途中からは歩ちゃんと高尾君の噂もあったから…」
4人は舞の言葉を無視して話を進めている。
無視された形の舞は当然面白くない。
「ちょっとみんな、私を無視して話さないでよ。酷いわ、酷い!」
飲んでいたカフェオレのスプーンを握りしめてスネまくる。
「ごめん、ごめん。でも、ムッチーも悪いよ。こういったことは張り合うことじゃないのに『まっちゃんに勝った』って。まっちゃんに失礼でしょ」
歩が舞に謝りながらも注意をした。
「というか、話を脱線させないでよね」
紗智が呆れながら歩に続いた。
「今は川崎君とムッチーの話をしているわけではありません」
響歌も冷たく言い放った。
そんな彼女達の傍で、真子本人は気にすることなく微笑んでいた。
「みんな、いいよ。ムッチーだって、自分のことを聞いて欲しいだけなんだから。それでもお互い4月みたいだから、勝った負けたじゃなくて仲間だよね。恋の仲間」
舞は3人に反論されて不貞腐れていたが、真子の言葉が気に入ったようだ。すぐに機嫌が直り、満面の笑みをして真子の手を握った。
「さすがまっちゃん、相変わらず優しいよね。そうよ、私達は共に4月から想っていたんだもの。いわば恋する乙女共同体なのよ。これから協力していかないとね。まっちゃん、任せておいて。私、まっちゃんの為にも頑張るから!」
舞の意気込む姿を前にして、真子は不安を感じずにはいられない。
「わ、私の方は適当に頑張ってくれたらいいから。それよりもムッチーは自分のことだよ。川崎君との恋を早くハッピーエンドにさせなよ。私のことはその後でいいから」
舞は真子の言葉が少し不満だったが、それでも納得できる部分が大半だったので同意した。
「まっちゃんは欲が無いよね。でも、そうよね。早く私が恋を完結させて、みんなにお手本を見せてあげないとダメだもの。ねぇ、みんな、見ていて。私、頑張るから!」
複雑な表情の4人を前に、舞は自分の恋の完結宣言をした。
「えぇー、まっちゃんって、高尾君のことが好きだったのー!」
「ちょ、ちょっと、ムッチー。声が大きい!」
驚きのあまり出た舞の大声に、真子が慌てた。
だが、驚いたのは舞だけではない。この場にいる他の3人も、大声こそ出さなかったものの、思いは舞と同じだ。
今日は1月最後の日曜日。舞達がいる場所は柏原駅の近くにある喫茶店の一番奥のテーブルだ。奥に紗智と真子が並んで座り、その対面に響歌、舞、歩が座っている。それぞれの前にはオーダーした飲み物が置いてあった。
柏原駅はいつも歩や紗智、真子達が通学の為に利用している駅だ。舞と響歌にとってはあまり馴染みがない。何しろこの駅は、宮内駅とは反対方面にある終点駅なのだから。
だから舞は、紗智達はともかく反対方面に出向くことになる響歌がわざわざ休日に来てくれるか心配だった。
いや、実際に響歌は、最初は嫌がったのだ。しかも既にその日はバイトを入れていたらしく、余計に渋っていた。
舞もその日はバイトを入れていた。それでも友情の為なら休むくらいなんでもないと、バイトを休むことにした。
だから自分も休んだのだから…と説得をし、前もって聞いていた歩の助言通り『さっちゃん達の恋愛話を聞き出してみよう』とそそのかしたら、響歌もようやく了承。
こうして舞と歩は、作戦通り他の3人を休日に誘い出して暴露大会を開催することに成功した…のだけど。
まさかしょっぱなから、まっちゃんで驚くことになるなんて!
本当に予想外だったのだ。
何しろみんな、真子が高尾と話しているところを見たことが無い。いや、真子が高尾のことを見ているところさえ見たことが無かった。しかも歩と高尾の噂の時、一番楽しそうにみんなに言いまくっていたのは、実は真子だったのだ。
「じゃあ、まっちゃんはいつから高尾君のことが好きだったのよ?」
響歌はまだ怪訝そうだった。真子の口から聞いてもまだ信じられないのだ。
「私も聞きたい。いつから、何がきっかけだったの?」
紗智も響歌と同じ思いのようだ。
真子は恥ずかしそうにクリームソーダの中のアイスをスプーンで突いている。
「あ…みんな、そんなに驚かなくても。あ、あのね、好きになったのは4月かなぁ。カッコイイ人いないかなって探していたら高尾君が目についたの。で、段々と見ていくうちに、いつの間にか…好きになってた」
歩は大好物のフルーツパフェを前にしているというのに、驚きのあまりまだ一切手につけていない。
「4月からって、また…早いね」
歩の発言に、舞がすぐ異を唱える。
「何、言っているのよ、歩ちゃん。4月からなんて普通だよ。私だって、テツヤ君を愛するようになったのは4月からだもの。しかも私の場合は入学式の時からだしね。フッ、まっちゃんに勝った」
「しっかし、まっちゃんの恋が4月からだったなんて。私もまだまだ見抜く力が無いのねぇ。全然気づかなかったわよ」
「本当だよ。私も結構鋭い方だと思っていたんだけど、修行が足りないのかなぁ」
「2人が気づかないのなんて当然だよ。私なんていつも一緒にいたのに全然気づけなかったんだから。ちょっとショックだよ。まっちゃんも早く言ってくれたら良かったのに。文化祭の時なんて滅茶苦茶チャンスあったから、知っていたら手伝えたのに。水臭いなぁ」
「ごめんね、さっちゃん。でも、やっぱりなかなか言えなかったんだよ。特に途中からは歩ちゃんと高尾君の噂もあったから…」
4人は舞の言葉を無視して話を進めている。
無視された形の舞は当然面白くない。
「ちょっとみんな、私を無視して話さないでよ。酷いわ、酷い!」
飲んでいたカフェオレのスプーンを握りしめてスネまくる。
「ごめん、ごめん。でも、ムッチーも悪いよ。こういったことは張り合うことじゃないのに『まっちゃんに勝った』って。まっちゃんに失礼でしょ」
歩が舞に謝りながらも注意をした。
「というか、話を脱線させないでよね」
紗智が呆れながら歩に続いた。
「今は川崎君とムッチーの話をしているわけではありません」
響歌も冷たく言い放った。
そんな彼女達の傍で、真子本人は気にすることなく微笑んでいた。
「みんな、いいよ。ムッチーだって、自分のことを聞いて欲しいだけなんだから。それでもお互い4月みたいだから、勝った負けたじゃなくて仲間だよね。恋の仲間」
舞は3人に反論されて不貞腐れていたが、真子の言葉が気に入ったようだ。すぐに機嫌が直り、満面の笑みをして真子の手を握った。
「さすがまっちゃん、相変わらず優しいよね。そうよ、私達は共に4月から想っていたんだもの。いわば恋する乙女共同体なのよ。これから協力していかないとね。まっちゃん、任せておいて。私、まっちゃんの為にも頑張るから!」
舞の意気込む姿を前にして、真子は不安を感じずにはいられない。
「わ、私の方は適当に頑張ってくれたらいいから。それよりもムッチーは自分のことだよ。川崎君との恋を早くハッピーエンドにさせなよ。私のことはその後でいいから」
舞は真子の言葉が少し不満だったが、それでも納得できる部分が大半だったので同意した。
「まっちゃんは欲が無いよね。でも、そうよね。早く私が恋を完結させて、みんなにお手本を見せてあげないとダメだもの。ねぇ、みんな、見ていて。私、頑張るから!」
複雑な表情の4人を前に、舞は自分の恋の完結宣言をした。