修学旅行…ねぇ。

 そういえばその時って、歩ちゃんの言った通りでそんなことを話していたような気がする。

 かなり盛り上がってしまい、最後には先生に起きていることがバレて怒られたけど。今となってはその怒られたことさえいい思い出として一緒に残っている。

 舞もその時のことを思い出して楽しくなってきた。

 うん、これって、いいアイデアかも!

「歩ちゃんってば、なんていい案を出してくれるの。いいよ、それ、絶対にいい。これならみんなの好きな人が一挙公開できるし、一石二鳥でスッキリするよね。うん、しよう。今すぐしよう!」

 舞は凄く乗り気だ。

「決まりだね。でも、さすがに今すぐは無理だよ。昼休みとか、授業と授業の間の10分休憩の時は短か過ぎて無理だし、一番気軽にできそうな放課後は中葉君と橋本君に響ちゃんを押さえられているもの。やるとするとしたら休日、みんなで集まるのが妥当だと思う」

 早くしたい気持ちは舞と一緒だが、歩は現状を考えて冷静に判断した。

「えぇ~、週末まで待つの~。でも、まぁ、仕方がないか。さすがに中葉君達の前ではできない話だもんね。じゃあ、今週の日曜日なんてどう。早過ぎる?」

 一瞬不満の声を上げたものの、舞の方も現状を凄くわかっているので素直に了承した。

「こういったことはなるべく早い方がいいよ。私は大丈夫だから、後は他の3人の予定だけだね。早速、次の休み時間に訊いてみよう。後のことはそれから考えようね」

 歩の場合は舞とは違って自分も好きな人をバラさないといけなくなるが、そのへんのところはいいらしい。

 歩は自分のことよりもみんなの恋愛事情が気になっていた。意外かもしれないが、彼女はこの中で一番他人の恋愛事情に首を突っ込みたくなる性分だったのだ。

 自分のことよりも、他人のことに首を突っ込んでいる方がよっぽど楽しい。だからグループの中で最初に響歌の気持ちに気づいたのである。

 だいたい響歌のことでは、以前から首を突っ込みたくてたまらなかったのだ。何しろ男子の人数が少ない経済科の中で、響歌はその中の1人を好きになり、意中の彼とは違った2人の男子から気に入られているのだから。

 もしかすると3人かもしれないが…川崎のことは今は置いておこう。

 しかしそれでも、2人から気に入られているということは凄いことなのではないだろうか。

 歩は男子の少ないこの学校に来た時点で、校内での恋愛事情には諦めていた。

 それなのにここにきてこう、なのである。しかも自分の友達が。

 首を突っ込みたくなるのも当たり前の話ではないか!

 これまで響歌の気持ちを知りながら、それでも沈黙を守ることがどんなに辛かったか。

 その点では、歩は舞に感謝をしていた。舞が気づいて行動に移したからこそ、歩もそれに便乗していけるのだから。

 響ちゃん、私も頑張るから!

 響歌にとって、危険なのは舞よりも歩の方かもしれない。