響歌は呆れながら日記を読んでいた。

「今回も想像通りの書いているのね。よくもまぁ、自分をこんなにも持ち上げられるわよ。不思議で仕方がないわ」

「でしょう。本当に読んでいてムカつく日記だよ。こんなのに律儀に返事を書かないといけないなんて。こんな生活、もう終わりにしたいよ!」

「じゃあ、書かなければいいでしょ」

 別れた以上、交換日記をする理由は無い。

 亜希からすれば、なんで律儀に日記を書いているのか不思議で仕方がなかった。

「書かなければ、奴は直接来ちゃうのよ!」

 舞は絶叫し、頭を抱えた。

 返事を求めに直接来てしまう。それだけはなんとしても避けたい。そんなことをされたら目立ってしまう。

 目立つのであれば、返事を書く方がまだマシだ。そう思って続けているのだが、響歌にはずっと反対されていた。

 それはある程度、事情がわかった亜希も反対したいことだった。いや、響歌と亜希だけではない。舞の考えはほとんどの人が理解できないだろう。

 日記のやりとりをしているということは、つき合い続けていることだ。たとえ書いている内容が別れ話でも、だ。しかもそうすることによって中葉は舞のことが吹っ切れない。今ではもう途切れた関係なのに希望を持ってしまっている。

 嫌だ、嫌だとは書いてあるが、自分が要求したら返ってくるのだから本心ではない。正式な交際も、こちらが粘っていればまた復活するだろう。そう信じている。その証拠に、現在の日記でも中葉は舞の彼氏気取りの文章で書いている。

 端から見ている者からしたら、今の舞と中葉は苛々する関係だった。

 もうどちらでもいいから『つき合うなら、つき合う。別れるなら、別れる』とはっきりさせて欲しい。

 頭を抱える舞の傍で、2人は顔を見合わせて溜息を吐いた。