「信じられなくても、きっと本当のことなんだよ。いや、今は信じる、信じないっていうことを話しているんじゃない。まっちゃんのことなの。まっちゃんは響ちゃんに比べて自分の恋愛に対して全然努力をしていない。努力をせずに愚痴ばかり零している。それじゃあ、誰を好きになっても相手にしてもらえないよ。そりゃ、勇気を出して行動したら傷つくことにいっぱい出会うと思う。嬉しいことばかりじゃない。でも、何もしないでいるよりは何倍も素敵なことだと思わないの?」
真子は完全に舞の迫力に押されていた。
さっきは反論しようとしたが、容赦ない舞の言葉にとうとう俯いてしまった。
かなりのダメージだったようだ。
舞はなんだか真子を虐めているような気分になった。
でも、それでも、自分が悪役になっても、これは言わなくてはいけないことなのだ。
俯く真子をじっと見る。
本当はここで優しい言葉をかけるべきかもしれない。舞はそんな考えにチラッとなった。真子も誰かの助け舟を待っているような感じだ。
しかし、それではダメだ。それだと敢えて強く言った意味が無くなってしまう。
舞は優しい言葉が出ないように口元を引き締めた。
優しい言葉をかけちゃ、ダメ。絶対にまっちゃんの為にはならない。ここで見逃してしまうと、まっちゃんはまた同じことを繰り返してしまう。次の恋も似たような形で終わってしまう。
それじゃ、ダメなんだ。
この時の舞の気持ちは並々ならぬものだった。
真子は完全に舞が出す空気に飲まれてしまっている。それは真子だけではない。傍でやり取りを聞いていた他の3人も同じだった。
沈黙が続く中、歩が一歩前に出た。舞の気持ちもわかるが、いきなり責められ、答えを求められる真子に対して可哀想な気持ちになったのだ。
「ムッチー、取り敢えずこの話は中断して場所を変えよう。ここはゲームセンターの入口だから出入りの邪魔になっているし…ね?」
「そうだね。私とムッチーはいいとしても、他の3人はそろそろ帰らないといけないしさ」
響歌が舞の肩に手を置いた。少し落ち着けといった、響歌からの無言の言葉だ。
「仕方がないけど…そうしようか」
舞は不満だったが、確かに2人の言う通りだったので渋々切り上げることにした。ここに長時間いると邪魔になるし、本当にもう帰らないといけない時間になっていたのだ。
真子は俯きながら紗智に連れられ、後の3人も無言でここから離れた。
響歌の視線の先で、紗智達を乗せた電車が遠ざかっていく。
その電車を見つめながら、響歌が呟いた。
「ムッチーの気持ちもわかるけど、今はタイミングが悪かったかな」
「それって、私が悪いって言いたいの?」
聞き捨てならないといった感じで、舞が響歌を睨んだ。
「私はそうとは言っていないんだけどね。でも、やっぱりテスト前だしなぁ」
響歌の呑気な言葉に、治まりかけていた苛立ちが再び舞の心の内に戻ってくる。
「響ちゃんさぁ、今はテスト前だからとか、タイミングがとか、言っている場合じゃないんだよ。まっちゃんの為には一刻も早く誰かが言わなければならなかったの。私はそれを言っただけなの。もう見て見ぬふりをするのは限界だったの。響ちゃんだって、そんな気持ちにならなかったの?」
「そりゃあ、限界が近いのは私も同じだったわよ。でも、私だったら、あの場では言わなかったかな。言うとしたら、まっちゃんと2人きりの時だったと思う」
舞には響歌の言葉の意味がわからなかった。
まっちゃんと2人きりの時に言うの?
じゃあ、みんなが揃っていたらダメだということ?
そんなの、関係ないと思うけど…
「なんで2人きりの時に言わないといけないの?」
舞としては当然の質問だが、響歌は肩をすくめた。
「今頃、まっちゃんはみんなから責められたと感じているんじゃないかな。実際に言っていたのはムッチーだけだけど、私達もみんな黙っていたから味方が誰もいないと思っていそうだわ」
舞は真子と2人で話しているものと思っていたが、その場には響歌達の姿もあった。そんな彼女達は、誰も何も言っていなかった。それは舞からすれば、自分が口を出してややこしくなると困ると思い、みんなは黙っているのだと思っていた。
だが、真子からすれば、どうしてみんな助けてくれないのだろうと感じただろう。
みんな、自分を庇ってくれない。ということはここにいるみんなは舞の味方。
自分の味方が、ここには誰もいない。自分はみんなによってたかって責められている。こう、真子が考えていても不思議ではないのだ。
4人を相手に立ち向かえる程、真子は強くない。そんなに強ければとっくに高尾の見舞いに行っている。将来はどうなるかわからないが、今の真子は被害者意識が高い、自分で自分の成長を止めている女の子なのだ。
「もしかして…まっちゃんの為に言っていたことが、実は裏目に出てたってこと?」
「その可能性は大いにあるよ。でも、言ってしまったことは仕方ないし、黙ってそれを見ていた私達も悪いからね。ムッチーを責めることはしないわよ」
むしろよくここまで言ったという感じだ。響歌は舞に対しては褒めてあげたいくらいの気持ちだった。
だが、舞の厳しい助言を受けていた真子のことを思うと、大いに褒めることができなかった。
「こうなったら帰りの電車の中で、さっちゃんや歩ちゃんがどうフォローしてくれるかにかかっているね」
響歌は小さく呟いた。
感情に任せてつい言ってしまったけど、もしかして自分は大変なことをしたのではないだろうか。
舞の額に冷や汗が出てきた。
どうか、どうか響ちゃんの言う通り、さっちゃんと歩ちゃんがまっちゃんにフォローしてくれていますように!
衝撃を受けた真子や、舞達の希望の光である紗智と歩を乗せた電車は、既に彼女達の視界からは見えなくなっていた。
2人はしばらくその場から動かず、不安な表情で駅のホームに立っていた。
真子は完全に舞の迫力に押されていた。
さっきは反論しようとしたが、容赦ない舞の言葉にとうとう俯いてしまった。
かなりのダメージだったようだ。
舞はなんだか真子を虐めているような気分になった。
でも、それでも、自分が悪役になっても、これは言わなくてはいけないことなのだ。
俯く真子をじっと見る。
本当はここで優しい言葉をかけるべきかもしれない。舞はそんな考えにチラッとなった。真子も誰かの助け舟を待っているような感じだ。
しかし、それではダメだ。それだと敢えて強く言った意味が無くなってしまう。
舞は優しい言葉が出ないように口元を引き締めた。
優しい言葉をかけちゃ、ダメ。絶対にまっちゃんの為にはならない。ここで見逃してしまうと、まっちゃんはまた同じことを繰り返してしまう。次の恋も似たような形で終わってしまう。
それじゃ、ダメなんだ。
この時の舞の気持ちは並々ならぬものだった。
真子は完全に舞が出す空気に飲まれてしまっている。それは真子だけではない。傍でやり取りを聞いていた他の3人も同じだった。
沈黙が続く中、歩が一歩前に出た。舞の気持ちもわかるが、いきなり責められ、答えを求められる真子に対して可哀想な気持ちになったのだ。
「ムッチー、取り敢えずこの話は中断して場所を変えよう。ここはゲームセンターの入口だから出入りの邪魔になっているし…ね?」
「そうだね。私とムッチーはいいとしても、他の3人はそろそろ帰らないといけないしさ」
響歌が舞の肩に手を置いた。少し落ち着けといった、響歌からの無言の言葉だ。
「仕方がないけど…そうしようか」
舞は不満だったが、確かに2人の言う通りだったので渋々切り上げることにした。ここに長時間いると邪魔になるし、本当にもう帰らないといけない時間になっていたのだ。
真子は俯きながら紗智に連れられ、後の3人も無言でここから離れた。
響歌の視線の先で、紗智達を乗せた電車が遠ざかっていく。
その電車を見つめながら、響歌が呟いた。
「ムッチーの気持ちもわかるけど、今はタイミングが悪かったかな」
「それって、私が悪いって言いたいの?」
聞き捨てならないといった感じで、舞が響歌を睨んだ。
「私はそうとは言っていないんだけどね。でも、やっぱりテスト前だしなぁ」
響歌の呑気な言葉に、治まりかけていた苛立ちが再び舞の心の内に戻ってくる。
「響ちゃんさぁ、今はテスト前だからとか、タイミングがとか、言っている場合じゃないんだよ。まっちゃんの為には一刻も早く誰かが言わなければならなかったの。私はそれを言っただけなの。もう見て見ぬふりをするのは限界だったの。響ちゃんだって、そんな気持ちにならなかったの?」
「そりゃあ、限界が近いのは私も同じだったわよ。でも、私だったら、あの場では言わなかったかな。言うとしたら、まっちゃんと2人きりの時だったと思う」
舞には響歌の言葉の意味がわからなかった。
まっちゃんと2人きりの時に言うの?
じゃあ、みんなが揃っていたらダメだということ?
そんなの、関係ないと思うけど…
「なんで2人きりの時に言わないといけないの?」
舞としては当然の質問だが、響歌は肩をすくめた。
「今頃、まっちゃんはみんなから責められたと感じているんじゃないかな。実際に言っていたのはムッチーだけだけど、私達もみんな黙っていたから味方が誰もいないと思っていそうだわ」
舞は真子と2人で話しているものと思っていたが、その場には響歌達の姿もあった。そんな彼女達は、誰も何も言っていなかった。それは舞からすれば、自分が口を出してややこしくなると困ると思い、みんなは黙っているのだと思っていた。
だが、真子からすれば、どうしてみんな助けてくれないのだろうと感じただろう。
みんな、自分を庇ってくれない。ということはここにいるみんなは舞の味方。
自分の味方が、ここには誰もいない。自分はみんなによってたかって責められている。こう、真子が考えていても不思議ではないのだ。
4人を相手に立ち向かえる程、真子は強くない。そんなに強ければとっくに高尾の見舞いに行っている。将来はどうなるかわからないが、今の真子は被害者意識が高い、自分で自分の成長を止めている女の子なのだ。
「もしかして…まっちゃんの為に言っていたことが、実は裏目に出てたってこと?」
「その可能性は大いにあるよ。でも、言ってしまったことは仕方ないし、黙ってそれを見ていた私達も悪いからね。ムッチーを責めることはしないわよ」
むしろよくここまで言ったという感じだ。響歌は舞に対しては褒めてあげたいくらいの気持ちだった。
だが、舞の厳しい助言を受けていた真子のことを思うと、大いに褒めることができなかった。
「こうなったら帰りの電車の中で、さっちゃんや歩ちゃんがどうフォローしてくれるかにかかっているね」
響歌は小さく呟いた。
感情に任せてつい言ってしまったけど、もしかして自分は大変なことをしたのではないだろうか。
舞の額に冷や汗が出てきた。
どうか、どうか響ちゃんの言う通り、さっちゃんと歩ちゃんがまっちゃんにフォローしてくれていますように!
衝撃を受けた真子や、舞達の希望の光である紗智と歩を乗せた電車は、既に彼女達の視界からは見えなくなっていた。
2人はしばらくその場から動かず、不安な表情で駅のホームに立っていた。