窓側にある自分の席で外を見ていた響歌の元に、真子が大慌てでやってきた。
「大変だよ、響ちゃん。今日から高尾君、2週間比良木病院に入院するんだって!」
「あれ、まっちゃん。さっきまでいなかったのに、いつの間に戻ってきていたの?」
響歌は今の真子の言葉を聞いていなかったので、とぼけた言葉を返した。
「今、戻ってきたとこ。さっきまで廊下で谷村さんと話していたんだよ」
「ふ~ん。でも、まっちゃんの席って谷村さんの前でしょ。その谷村さんとわざわざ廊下で話していたんだ。内緒話でもしていたの?」
「別に内緒話をしていたわけじゃないよ。トイレからの帰りに谷村さんに捕まっただけ。だからその時に高尾君のことを聞いたの!」
何もわかっていない響歌に、真子は完全に焦れていた。
その時、真子にとって救世主が現れた。
「高尾君が入院したってことを、なの?」
何も話がわかっていない響歌に代わって紗智が話に加わった。彼女の席は真子の前なのだが勉強をしていたので、真子は邪魔をしては悪いと思い、外を見ていた響歌の方に話したのだ。
だが、紗智は勉強しながらも会話を聞いていたらしい。
「うん、なんかね、胃潰瘍なんだって。やっぱり見た目通りでか弱かったんだね」
…それはどうだろう。
響歌と紗智は心の中でハモッていた。
そんな2人の心中を露知らない真子は、残念そうに続ける。
「あ~あ、この2週間、高尾君の顔が見られないなんて淋しいな。でも、高尾君の為に頑張らないとね」
…なんでまっちゃんが、高尾君の為に頑張るのだろう。
やはり声に出さずとも、思いは一致している2人だった。
その時、亜希が新たに会話に加わってきた。
「3人共、変な顔をしてどうしたの?」
その内容に、すぐに響歌が反応する。
「変な顔して、とは失礼ね」
「えー、だって本当に変な顔をしているんだもの。深刻そうだしさ」
不思議そうにする亜希に、真子がこれまでの話を教えた。
聞き終えた亜希は、いきなりトーンダウンした。
「あ~、なんだ、そのことか」
「どうしたのよ。何か嫌そうだよね?」
亜希の急な態度を妙に思った響歌が亜希に訊ねてみる。
紗智と真子も不思議そうだ。
「嫌そうというか…私さぁ、高尾君のことが好きになれないんだよね」
本当に嫌なのだろう。そのことが顔に凄く出ていた。
響歌はその理由を詳しく訊いてみたい気がしたが、さすがにこの場ではできない。
横目で真子を見ていると、真子は動揺していた。その傍にいる紗智も、真子の様子を気にしている。
「ま、人の好みは色々だからね。嫌いな人がいるのは仕方がないよ。ね、さっちゃん」
響歌がさり気なく紗智に同意を求めると、紗智は響歌の言葉の裏を悟り、慌てて響歌に合わした。
「そうそう、誰だって好きになれない人はいるから。亜希ちゃんが高尾君のことを好きになれないのは仕方がないよ」
2人はそこで終わるつもりだったが、亜希の口は止まらなかった。
「うん、そうだよね。なんかさぁ、本当に虫が好かないのよ。ああいうタイプって顔だけっていう感じがするもん。話したこともあるけど、その時も『アハッ、アハッ』って笑われてね。それが『なんじゃ、おのれ、バカにしてるのか!』っていう感じだったのよ。それに…」
「わ、わかった、わかった。高尾君の悪口なら、また授業中にでも聞いてあげるわよ。今はその高尾君が入院したっていう話をしていただけだから」
響歌が慌てながら亜希の高尾への悪口を途中で強引に止めたが、それは亜希からすればかなり不満が残るやり方だった。
「じゃあ、響ちゃん。本当に授業中に聞いてよね」
不機嫌丸出しの顔をしながら響歌の後ろにある自分の席に座った。
その場に残された3人は、複雑な顔をして互いの顔を見合わせたのだった。
「大変だよ、響ちゃん。今日から高尾君、2週間比良木病院に入院するんだって!」
「あれ、まっちゃん。さっきまでいなかったのに、いつの間に戻ってきていたの?」
響歌は今の真子の言葉を聞いていなかったので、とぼけた言葉を返した。
「今、戻ってきたとこ。さっきまで廊下で谷村さんと話していたんだよ」
「ふ~ん。でも、まっちゃんの席って谷村さんの前でしょ。その谷村さんとわざわざ廊下で話していたんだ。内緒話でもしていたの?」
「別に内緒話をしていたわけじゃないよ。トイレからの帰りに谷村さんに捕まっただけ。だからその時に高尾君のことを聞いたの!」
何もわかっていない響歌に、真子は完全に焦れていた。
その時、真子にとって救世主が現れた。
「高尾君が入院したってことを、なの?」
何も話がわかっていない響歌に代わって紗智が話に加わった。彼女の席は真子の前なのだが勉強をしていたので、真子は邪魔をしては悪いと思い、外を見ていた響歌の方に話したのだ。
だが、紗智は勉強しながらも会話を聞いていたらしい。
「うん、なんかね、胃潰瘍なんだって。やっぱり見た目通りでか弱かったんだね」
…それはどうだろう。
響歌と紗智は心の中でハモッていた。
そんな2人の心中を露知らない真子は、残念そうに続ける。
「あ~あ、この2週間、高尾君の顔が見られないなんて淋しいな。でも、高尾君の為に頑張らないとね」
…なんでまっちゃんが、高尾君の為に頑張るのだろう。
やはり声に出さずとも、思いは一致している2人だった。
その時、亜希が新たに会話に加わってきた。
「3人共、変な顔をしてどうしたの?」
その内容に、すぐに響歌が反応する。
「変な顔して、とは失礼ね」
「えー、だって本当に変な顔をしているんだもの。深刻そうだしさ」
不思議そうにする亜希に、真子がこれまでの話を教えた。
聞き終えた亜希は、いきなりトーンダウンした。
「あ~、なんだ、そのことか」
「どうしたのよ。何か嫌そうだよね?」
亜希の急な態度を妙に思った響歌が亜希に訊ねてみる。
紗智と真子も不思議そうだ。
「嫌そうというか…私さぁ、高尾君のことが好きになれないんだよね」
本当に嫌なのだろう。そのことが顔に凄く出ていた。
響歌はその理由を詳しく訊いてみたい気がしたが、さすがにこの場ではできない。
横目で真子を見ていると、真子は動揺していた。その傍にいる紗智も、真子の様子を気にしている。
「ま、人の好みは色々だからね。嫌いな人がいるのは仕方がないよ。ね、さっちゃん」
響歌がさり気なく紗智に同意を求めると、紗智は響歌の言葉の裏を悟り、慌てて響歌に合わした。
「そうそう、誰だって好きになれない人はいるから。亜希ちゃんが高尾君のことを好きになれないのは仕方がないよ」
2人はそこで終わるつもりだったが、亜希の口は止まらなかった。
「うん、そうだよね。なんかさぁ、本当に虫が好かないのよ。ああいうタイプって顔だけっていう感じがするもん。話したこともあるけど、その時も『アハッ、アハッ』って笑われてね。それが『なんじゃ、おのれ、バカにしてるのか!』っていう感じだったのよ。それに…」
「わ、わかった、わかった。高尾君の悪口なら、また授業中にでも聞いてあげるわよ。今はその高尾君が入院したっていう話をしていただけだから」
響歌が慌てながら亜希の高尾への悪口を途中で強引に止めたが、それは亜希からすればかなり不満が残るやり方だった。
「じゃあ、響ちゃん。本当に授業中に聞いてよね」
不機嫌丸出しの顔をしながら響歌の後ろにある自分の席に座った。
その場に残された3人は、複雑な顔をして互いの顔を見合わせたのだった。