ふうっ、フリーな立場というのはなんて気楽なものなのでしょう!
昨日までのあの悩ましい日々がまるで嘘のように思えてくるわ。
愛されるのも本当に辛いことだったのね。
でも、もう大丈夫。響ちゃんに話した通り、きちんと自分の気持ちを手紙に記したし、その手紙を中葉君の靴箱に今朝入れておいたから。その手紙を読んだ中葉君は、きっと私の気持ちをわかってくれるでしょう。
そして2人は美しく別れるのだわ。
中葉君、本当にごめんね。これから先、私達の歩むべき道は別れてしまうけど、決して過去を振り返らずにお互い前を向いて歩いていきましょう。そうすることが、きっとお互いの為になるのよ。
少し淋しい気もするけど、大丈夫。私にはすぐにまた素敵な人ができるはずだし、中葉君にだってイイ人が、きっと、きっと現れてくれるわ。
私以上に素敵な人なのかはわからないけどね。
でも、中葉君にとっては最高のパートナーが、きっとできるでしょう。だからそれまで我慢してね。
本当に色々なことがあったから、私のことは簡単には忘れられないでしょうけど…
舞は中葉との思い出の日々を振り返り、溜息を吐いた。
今朝、中葉の靴箱に手紙を入れた時点で、中葉のことはもう完全に終わったと思い込んでいた。
だが、世の中はそんなに甘くない。早速、舞にとっては招かざる客が4組にやってきた。
嬉しそうに自分の席に座っていた舞の顔から笑顔が消えた。逃げてしまおうかと腰を上げたが、すぐにその腰を下ろす。
今から逃げても遅いのだ。それがわかったから、じっとして座っているしかなかった。
招かざる客が舞のところにやってきた。
現在は2時間目が終わったばかりの休憩中だ。周囲はざわついているはずなのに、自分の周りだけは時が止まったかのように静かな気がする。
「おい、舞。この手紙はいったいどういうことだ」
舞のところに来るなり、その客が不機嫌丸出しで言ってきた。
「書いてある通りです」
舞はそれだけしか答えなかった。
だは、招かざる客…中葉はその言葉だけでは納得しない。
「ちょっと、廊下まで来て」
そう言うと、4組から出て行った。
舞としては中葉の言葉に従いたくない。
だが、行かないと中葉がここに戻ってきてしまう。それだけは阻止したい。自分の席に来られるくらいなら自分が中葉のいる場所まで行った方がいい。
舞は仕方なく自分の席から立ち上がった。
「いきなりこんな手紙を渡されても納得できるわけがないだろ」
中葉の言葉は誰もが頷くことができる言葉だった。
だが、舞としては納得してもらわなければ困るのだ。
「でも、私の気持ちはその手紙に書いた通りで、もうすっかり無いですから」
かなりキツイことを、舞は口にする。しかも敬語だったのでキツさが倍増されていた。
滅多に怒らない中葉も、これにはかなり頭にきたようだ。
「あっ!」
一瞬の出来事だった。
舞は自分の左頬を押さえた。
目の前の光景が信じられなかった。
まさか…そんなまさか!
し、信じられない。
中葉君が…中葉君がこの私をぶつなんて!
これは夢よ、夢に決まっている!
だが、左頬に残る僅かな痛みが夢ではないことを物語っていた。
中葉は舞を叩いてしまった。
そんなに強くはない。軽いものではあったが、叩いたことには違いない。
愛しい舞ではあるけれど、叩かずにはいられなかった。それくらい自分の感情がコントロールできなかったのだ。
「別れるなら、慰謝料をよこせ」
叩いた中葉の口から、今度は驚くべき発言が出る。
夢だと思いたかった。
彼は絶対にわかってくれると思っていた。
でも、何よ。なんだっていうのよ。
いくら頭にきたからとはいえ、こんな場所で私をぶつなんて。
しかも慰謝料って、なんなのよ。どの世界に3カ月つき合っただけで慰謝料を請求する学生がいるのよ。
信じられない。本当に信じられないわ。こんな人のことが今まで好きだったなんて!
舞は中葉の請求に何も言わず、中葉に背を向けて教室に戻った。
中葉は追いかけてこなかった。自分の席に戻った舞をじっと見た後、その場から去った。
昨日までのあの悩ましい日々がまるで嘘のように思えてくるわ。
愛されるのも本当に辛いことだったのね。
でも、もう大丈夫。響ちゃんに話した通り、きちんと自分の気持ちを手紙に記したし、その手紙を中葉君の靴箱に今朝入れておいたから。その手紙を読んだ中葉君は、きっと私の気持ちをわかってくれるでしょう。
そして2人は美しく別れるのだわ。
中葉君、本当にごめんね。これから先、私達の歩むべき道は別れてしまうけど、決して過去を振り返らずにお互い前を向いて歩いていきましょう。そうすることが、きっとお互いの為になるのよ。
少し淋しい気もするけど、大丈夫。私にはすぐにまた素敵な人ができるはずだし、中葉君にだってイイ人が、きっと、きっと現れてくれるわ。
私以上に素敵な人なのかはわからないけどね。
でも、中葉君にとっては最高のパートナーが、きっとできるでしょう。だからそれまで我慢してね。
本当に色々なことがあったから、私のことは簡単には忘れられないでしょうけど…
舞は中葉との思い出の日々を振り返り、溜息を吐いた。
今朝、中葉の靴箱に手紙を入れた時点で、中葉のことはもう完全に終わったと思い込んでいた。
だが、世の中はそんなに甘くない。早速、舞にとっては招かざる客が4組にやってきた。
嬉しそうに自分の席に座っていた舞の顔から笑顔が消えた。逃げてしまおうかと腰を上げたが、すぐにその腰を下ろす。
今から逃げても遅いのだ。それがわかったから、じっとして座っているしかなかった。
招かざる客が舞のところにやってきた。
現在は2時間目が終わったばかりの休憩中だ。周囲はざわついているはずなのに、自分の周りだけは時が止まったかのように静かな気がする。
「おい、舞。この手紙はいったいどういうことだ」
舞のところに来るなり、その客が不機嫌丸出しで言ってきた。
「書いてある通りです」
舞はそれだけしか答えなかった。
だは、招かざる客…中葉はその言葉だけでは納得しない。
「ちょっと、廊下まで来て」
そう言うと、4組から出て行った。
舞としては中葉の言葉に従いたくない。
だが、行かないと中葉がここに戻ってきてしまう。それだけは阻止したい。自分の席に来られるくらいなら自分が中葉のいる場所まで行った方がいい。
舞は仕方なく自分の席から立ち上がった。
「いきなりこんな手紙を渡されても納得できるわけがないだろ」
中葉の言葉は誰もが頷くことができる言葉だった。
だが、舞としては納得してもらわなければ困るのだ。
「でも、私の気持ちはその手紙に書いた通りで、もうすっかり無いですから」
かなりキツイことを、舞は口にする。しかも敬語だったのでキツさが倍増されていた。
滅多に怒らない中葉も、これにはかなり頭にきたようだ。
「あっ!」
一瞬の出来事だった。
舞は自分の左頬を押さえた。
目の前の光景が信じられなかった。
まさか…そんなまさか!
し、信じられない。
中葉君が…中葉君がこの私をぶつなんて!
これは夢よ、夢に決まっている!
だが、左頬に残る僅かな痛みが夢ではないことを物語っていた。
中葉は舞を叩いてしまった。
そんなに強くはない。軽いものではあったが、叩いたことには違いない。
愛しい舞ではあるけれど、叩かずにはいられなかった。それくらい自分の感情がコントロールできなかったのだ。
「別れるなら、慰謝料をよこせ」
叩いた中葉の口から、今度は驚くべき発言が出る。
夢だと思いたかった。
彼は絶対にわかってくれると思っていた。
でも、何よ。なんだっていうのよ。
いくら頭にきたからとはいえ、こんな場所で私をぶつなんて。
しかも慰謝料って、なんなのよ。どの世界に3カ月つき合っただけで慰謝料を請求する学生がいるのよ。
信じられない。本当に信じられないわ。こんな人のことが今まで好きだったなんて!
舞は中葉の請求に何も言わず、中葉に背を向けて教室に戻った。
中葉は追いかけてこなかった。自分の席に戻った舞をじっと見た後、その場から去った。