やがて、少し落ち着いたのを見計らって彼女を解放すると、変わらず優しい表情で彼女を見つめる。

「君は今日から私の妻になるんだよ。それでもいい?」
「はい……」
「本当に?」
「……はい。よろしくお願いします」

 フィーネは馬車の揺れで身体がこけそうになりながらも、目の前に座るオスヴァルトに深く礼をする。
 狭い馬車の中でお辞儀する彼女の頭は、オスヴァルトの膝につくのではないかというところまで深く下げられていて彼は慌てて彼女の肩を抱き起こす。

「そんな私に礼を尽くさなくても大丈夫。気軽に接してほしい」
「ですが……」

 その様子にオスヴァルトは頭をかき、唇を少し噛みながら悔しそうな表情を浮かべる。