━━プルルルル━━



「あ····もしもし?ほんとだ、すぐ戻る。」



誰かからの電話に出ると小戸森さんはそう言っていた。



「えーと、·····」



何か言いかけてそのまま黙ってしまった。



「連れ回しといて言うのも変なんだけどこの後って空いてたりする?」



私は自分のスマホの時計を見た。
15:00だ。



「まだ大丈夫です。」


「ならここから10分ぐらいのところなんだけど今日の仕事場で····来てくんない?」



ここの近くに仕事場?
なんの撮影なんだろう。



「お邪魔でなければぜひ。」



行ってみたいと思った。
すると小戸森さんは口角を上げて私の腕を掴んだ。



「悪いんだけどもう遅刻しそうなんだよね。
走るよ。」

━━グイッ━━

「わっ·····!」



急に引っ張られて私の重心は前へと傾いた。そして走り出した小戸森さんにつられ私も右足を大きく前へ出した。




━━タンッ━━



最初の大きな一歩は体がすごく軽く感じた。







「はぁっはぁっ····」


「フー·····」



どうやら到着したらしい。
私は息がなかなか整わない。



「碧音さん·····!最低でも開演3時間前にはいてくれないと!準備があるんですから!」