「ここ、記者は立ち入り禁止ですよ。」


昔からの記者にそう言うと「私の父は会社の幹部でおかげで学生の頃からインタビューをさせてもらったり、こんな風に通してもらえるんです。」


「俺はそういう人に媚び売ったりしないから。早く出ていって。」


目も合わせずそのまま通り過ぎたが彼女は声を張って言った。


「桜樹桜音羽·····!彼女の話を聞きたいんです。」


「記者を贔屓しない主義なんで。」



特に辛辣な言葉を綴る人に話すような内容じゃない。


「違います。彼女の友人としてあの子の話を聞かせてください。」


俺は足を止めた。桜音羽の友達?


「彼女の通っていた大学に私も行ってました。突然消えたその友人と全く一緒なんです。あなたの結婚相手の名前が。」


その眼差しに嘘はなく見えた。なんでだろうね桜音羽。君のことになるとどんな相手でも信頼してしまいそうになるのは。


「そこの空き部屋でもいいですか? 」

「ありがとうございます⋯! 」


「確か、堀さんだったよね。」

「覚えていただけてたんですね。」

「毎回辛辣なインタビューされてるからね笑」


なんとなくの会話をしつつ目が合うともう桜音羽の話になった。李桜以外からの桜音羽の話なんて貴重すぎると感じた。


「⋯大学一年の数ヶ月、すごく気の合う友人二人ができたんです。桜樹桜音羽はそのうちの一人で。
体調が悪いと言って大学を休んだあと彼女からの連絡は途絶えました。
それでもあんなに優しい子が意味もなくいなくなるはずがないと言って私ともう1人の友人は手当たり次第に知人の知人などにも話を聞いていたんです。

けど⋯彼女は極端に人との関わりが少ない子でほとんどの人がうろ覚えなほど。

家を住所知らない。そんなことに気づいたのはいなくなった後でした。彼女を見つける手段が私たちにはなかったんです。

もう1人の友人はかなりのショックを受けていて裏切られたと呟くこともありました。ただそれはもし困っているんなら頼って欲しかったんだと思います。もちろん私だって。

でもいつからか私の気持ちは記者になるための力を人一倍身につけたいと思い始めて。彼女と関わっていた時期から父の力でインタビューなどはしてきましたけど父の力ではなく私の力を身につけることでいつか彼女を見つけれるんじゃないかと。まぁ父の力も使っちゃってますけど笑


私達の前から姿を消した桜音羽はどんな風に過ごしたんですか?彼女は私達から離れたあとどんな気持ちだったんでしょう?」