それでも諦めたくなくて毎日通い続けたある日、ナースステーションでいつものように病室を教えて貰えるように頼もうと思ってたらその手前のベンチに座ってたんです。

目を閉じて、痩せていたけれど穏やかに口角を上げている彼女が。
自然と伝わってきた感情に俺は一言『やっと会えた』それしか言えませんでした。

彼女は俺に好きだと伝えてくれて、舞い上がりすぎた俺はそのままプロポーズまでして。・・・彼女はかなり悩んでそれでも俺と共に生きることを決めてくれました。

それから退院も決まって婚姻届を彼女が出しに行ってくれたあと、知り合いの店でウェディングフォトをやることを密かに決めていて彼女の兄に連れてきてもらいました。

困惑していたはずなのに批判も賞賛も全てを受け入れる覚悟をした彼女は俺からのプレゼントを喜んで受け取ってくれました。


最高の笑顔で俺が選んだドレスを着て『幸せ』って言ってくれた。

........そんな幸せな日から3週間と4日後、彼女は息を引き取りました。俺は特番の音楽番組に出演の日で家でたった一人で。
後悔しました。1人にしてしまったことを。彼女は我慢強いから朝もキツくても言わなかったんだと思います。
けど、穏やかな表情で、その目線は近くに置いていたテレビでした。彼女の手にしていたスマホを確認すると俺とのトークルームでキーボードを出したまま送らずに終わってました。

内容は······『かっこいいじまんの、』そこで終わってたんですけどその時思ったんです。いつまでも彼女に自慢されるような〝夫〟でいたいと。

そこからはとにかく仕事と向き合いました。目の前の一つ一つをこなしていくと俺はいつの間にか大きなステージに立っていました。〝国民的アイドル〟誰もが夢見る場所に立てていたんです。

だからとは言いませんが年数も経ってやっと彼女の想い出を整理しようと思いました。