桜樹も疲れた顔してるし、ほぼ初めてだけど家族として話でも聞くか。


「すぐそこだから行くぞ。」

「·····。」



俺に反論する気力もないのか不機嫌な顔してるのに何も言わずついてきたことに驚いた。


2人ともビールを頼み何も言わず一気に飲み干した。この方が話せるとお互いに思ったからだろう。



「相変わらず美人だよな、雪ちゃん。」

「桜音羽にチクリますよ。」

「俺らが一緒に飲んでることの方が驚くと思うけど。」




ビールコースターは桜模様の綺麗な柄だった。それを見つめて桜音羽の笑顔を思い出す。



「実は彼女、妊娠してるんです。」


桜樹は俺と同じようにコースターを眺めていた。妹を思い出しながら今の悩みを打ち明けようとしている。

たまたま来ようと思ってた店が個室でよかった。今や国民的アイドル桜樹李桜だからな。


「じゃあよく聞くつわりってやつ?」

「それもあるみたいですけど精神的に酷くて·····マタニティブルーらしいです。出産後になったりするのは知ってたんですけど妊娠期間にもなるらしくて、俺のせいなんです。」


俯いてる桜樹になんて声をかければいいのか分からなかった。
それでも身近に話せるやつがいなかったのか桜樹はまだ話を続けた。



「1年前に結婚発表をしてそれから彼女は一般人なのに俺と共に酷いバッシングを受け続けてます。『30歳で結婚なんてアイドルとして自覚がない。』『結婚すらなら辞めてからにしろ。』『相手も自覚が無さすぎる。』『アイドル誑かすとかどんなヤバいやつだよ。』って今8ヶ月なんで無事に産まれてきてくれた後に発表するともっと悪化すると思うんですよね。」