「本当に俺でいいの?」

「むしろお兄ちゃん以外誰がいるの? 」

「母親がやるようなやつでしょ?だったら·····」


きっと雪ちゃんが適任だったって思ってるんだろうな。でも違うんだ。


「雪ちゃんが教えてくれたんだけど、ベールダウンは生まれてから今までを見守ってきたお母さんがやることが多いんだって。
でもね、お母さんには頼めないし、生まれてからお父さんとお母さん、それからお兄ちゃんにたくさんの愛情を貰って·····2人がいなくなってからはお兄ちゃんが何倍も大切にして見守ってくれたから今の私があるんだよ。
きっとお母さんが生きてても私はお兄ちゃんにしてもらいたかったと思う。
最後の身支度してくれる?」



伝えたいことは沢山あるけど上手く言葉にできない。でも大丈夫、きっと伝わってるから。


部屋には2人しかいなくて秒針の音だけが鳴り響く。





お兄ちゃんの手がベールに触れた。そして私の顔にゆっくりと下ろしていく。



「桜音羽を守るのはもう俺じゃないんだね。桜音羽は幸せ?」



ベール越しに見えたお兄ちゃんの目は潤んでいた。



「うん。お兄ちゃんの妹でいれて幸せだった·····!」



これでもかってくらいの笑顔で答えると満足そうな表情を見せてくれた。

お兄ちゃんはそのまま扉を開けて私を碧音さんの元へと手をひいて連れていってくれた。